猫と暮らすニューヨーク

保護猫と保護犬、野良猫。すべてに惜しみない愛を

  • 文・仁平綾、写真・前田直子
  • 2018年10月9日

サンフランシスコ出身の夫妻は、NYに暮らして20年。「部屋がもっと広ければ、犬や猫をさらに数匹飼いたいです」

[猫&飼い主のプロフィール]
猫・Achilles(アキレス)11歳 オス グレーのトラ柄、Cassie(キャシー)11歳 メス 三毛猫
飼い主・マンハッタンで靴のセレクトショップTani(タニ)を営む、Nick Keenan(ニック・キーナン)さんとJill Keenan(ジル・キーナン)さん夫妻。マンハッタンのワシントンハイツにて、猫2匹と4歳のオス犬Dylan(ディラン)と共に暮らす。

    ◇

ジャーマンシェパードやゴールデンレトリバー、幼少の頃から「家にはいつも犬がいて、犬と育ちました」と話す夫のニックさん。「猫がいたこともあるけれど、正直なところよく覚えていないんです」というぐらい、完全な犬好き人間だった。妻のジルさんと出会うまでは……。

一方のジルさんは、猫好きのお母さんの影響もあり、子どものころから猫と育った。ニックさんと出会ったときも、「Ivan(アイヴァン)という猫を飼っていたんです。夫には悪いけれど、アイヴァンと私が先に暮らしていたから、猫を受け入れてもらうしかなかった」と笑う。

犬好きのニックさんだけれど、ジルさんの愛猫アイヴァンとは案外すぐに打ち解けた。「すごく頭のいい猫でした。テレビを見ていると胸に乗ってきて、『見えないからどいてよ』って言うと、素直に足のほうに移動するんです。言葉が理解できたんですね」(ニックさん)。

やがて18歳の大往生を遂げたアイヴァン。続いて夫妻が迎えた猫が、兄弟猫のアキレスとZues(ズース)だった。

水に妙なこだわりがあるというアキレス。「水道水は飲みません。浄水フィルターを通して、冷蔵庫で冷やした水しか飲まないんです」(ジルさん)

胸のところにぽちっと白いスポットのある、グレーのトラ柄猫。タイ原産の猫コラットがミックスされているとかいないとかいう兄弟猫を夫妻の友人が保護し、それを譲り受けた。2匹が6歳を迎えた頃、悲劇が起こる。ズースが突然FIP(コロナウィルスが原因で免疫系に異常が起こる病気)を発症し、亡くなってしまったのだ。

その悲しみは「言葉で言い表せないほど」と夫妻。「まだズースが元気な頃、家に帰ってソファでくつろいでいると、いつも胸のところに乗ってきてね……」。ズースとは特別に強い心の繋がりを感じていたというニックさんは、今でもズースのことを思い出すと、その優しい目がうるんでしまう。「犬だろうが、猫だろうが関係ない。動物は、いつだって人間にとってスペシャルな存在です」というニックさんに、ジルさんも「猫好き人間だったけれど、保護犬のディランを飼い始めて変わりました。犬には犬の、猫には猫の素晴らしさがある。猫好き、犬好き、どちらかなんて言えないですね」。猫も犬も、丸ごと愛する二人なのである。

「なぜだかはわからないし、いつからかも覚えていないのだけれど……。アキレスのことをローリーって呼んでます」と夫妻。猫の呼び名がいつの間にか変わる現象、ありますよね

ズース亡き後も元気に暮らす猫のアキレスは、実は生まれつき後ろ脚が悪く、子猫のときに膝をスクリューで固定する大手術を受けた。それにもかかわらず、11歳になった今もおもちゃを追いかけ家中を走り回り、その強靭な脚力を見せつける。そんなアキレスを、サッカー好きのニックさんは、かの有名な選手にちなんでロナルドと称する。

おっとりしたアキレスに比べて、気が強いキャシー。「ネズミを捕まえる過酷な日々を送っていたからじゃないかと思う」とジルさん

一方、メスのキャシーは、「名ハンター」とジルさん。というのもキャシーは元々、マンハッタンにあるボデガ(食料品や日用品を販売する街中の小さなショップ)の地下で、ねずみ退治のために飼われていた“お仕事猫”。夜になると通りをうろつき、食べ物を探すというタフな日々を送っていた。保護猫のボランティアを行うジルさんが、そんなキャシーを夜道で保護し、譲り受けた経緯がある。「家にやってきたばかりの頃は、おもちゃを与えても、口にくわえて10分ぐらい絶対に離さなかったんです。ハンターの血が騒いだのでしょうね。オモチャを獲物と捉えていたみたい」(ジルさん)

そんな2匹の生活を少々かき乱す存在が、まだ4歳の保護犬ディランだ。遊びたい一心で猫のアキレスを追いまわすディランを、見かねたキャシーが止めに入ることもあるとか。猫と犬が共存する家のなかは、賑やか極まりない。

キャシーの顔にご注目。取材チームの来訪で落ちつかず、吠えてばかりの犬のディランに睨みをきかせているところ

ところでニックさんとジルさんは、飼い猫と飼い犬以外にも、自宅の向かいにある路地で2匹の野良猫の面倒を見ている。雨風がしのげる小屋を用意し、毎日食事を与え、雪の日は雪かきも欠かさない。「私たちの人生のポリシーは、毎日を最大限に暮らすこと。そして優しさをもって、他人や動物に接すること」とジルさん。夫妻の慈悲を受けた猫4匹と犬1匹は、今日もその命を力いっぱいに生きている。

>>つづきはこちら

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連載「猫と暮らすニューヨーク」では、ニューヨークで猫と生活するさまざまな人を訪ね、その暮らしぶりから、ユニークなエピソード、インテリアや飼い方のアイデアまでを紹介します。

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靴のショップ「Tani」のウェブサイト
http://www.taninyc.com/

靴のショップ「Tani」のインスタグラム
https://www.instagram.com/taninyc/

ジルさんのインスタグラム
https://www.instagram.com/jilllkeenan/


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PROFILE

仁平綾(にへい・あや)編集者・ライター

仁平綾

ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。

http://www.ayanihei.com
http://www.bestofbrooklynbook.com
photo by Naoko Maeda

前田直子(まえだ・なおこ)写真家

前田直子

24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
http://www.naokomaeda.net

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仁平綾(にへい・あや)編集者・ライター

仁平綾

ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
http://www.ayanihei.com
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photo by Naoko Maeda

前田直子(まえだ・なおこ)写真家

前田直子

24歳で渡米。サンフランシスコのAcademy of Art Universityで写真を学んだ後、日本へ帰国し、フォトグラファーの前田晃氏に師事。2010年に独立し、雑誌や写真集、ウェブなどで幅広く活動。2013年に再び渡米、現在はニューヨーク・ブルックリンを拠点に、日本&アメリカの雑誌や広告、ウェブなどで撮影を手がける。猫アレルギーでありながら、子どもの頃から無類の猫好き。10代の頃、実家で飼っていた猫の名前はチノ。
http://www.naokomaeda.net

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