花のない花屋

<286>花を贈ろうにも「お金は自分のために」と断る母ががんに、今度こそエールを送る花束を

  • 花 東信、写真 椎木俊介
  • 2018年10月19日

  

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〈依頼人プロフィール〉
伊藤ゆう子さん 36歳 女性
京都府在住
会社員

    ◇

 65歳の母に子宮がんが見つかりました。先日無事摘出手術が終わり、今は抗がん剤治療をしています。生きるための治療とはいえ、やはり脱毛、吐き気、食欲不振など副作用があり、苦しみながら耐えています。

 母は私が小学校に上がった頃、子宮内膜症で入院したことがありました。「これからはあなたがしっかりしなさいよ」と、買い物係を任されたのですが、なぜかケンカになって、私は母に「入院なんてお金がかかる! 無駄な費用だ!」と言い放ったことを覚えています。

 その後結婚して子どもを授かり、切迫早産で3カ月入院したときは、入院中、母は毎日のようにお見舞いにきてくれました。スーパーでのパートを終えた後、食事もとらずに急いできてくれていたことを知ったのは、後になってから。小学生の私は母になんてことを言ってしまったんだ、とようやく気づきいまだに後悔しています。 

 思えば、昔から母は気の弱い私に対して、ときに厳しく、ときにやさしく守りながらずっと側にいてくれました。高校受験のとき、試験が終わるまで何時間も待合室で待ってくれていたこともあります。就職後、仕事のストレスで食事が食べられなくなったときは、毎日お弁当を作ってくれました。どれだけ今まで母に救われてきたか、感謝してもしきれません。

 母は、うれしいときも悲しいときも、家族の前で涙をみせたことはなく、弱音も決して吐かない人です。でもこれからは私が支えたいと思います。だから、安心して治療に専念し、小さな孫の将来を見続けてほしいです。そして、私が親孝行できるように長く生きてほしいです……! 

 そこで、東さんにエールを送る花束を造ってもらえないでしょうか。実はこれまで母に花束を贈ったことがありません。花を贈ろうかというと、「自分のためにお金を使いなさい」と断られるからです。でも、今は花の持つ生命力を母に感じてもらいたいです。母はハッキリした明るい赤が“自分のテーマカラー”だと言っていました。オレンジやイエローなど暖色系も好きです。どうぞよろしくお願いいたします。

花のない花屋


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PROFILE

東信(あずま・まこと)フラワーアーティスト

写真

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。http://azumamakoto.com

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東信(あずま・まこと)フラワーアーティスト

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1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
作品集に「ピエール・エルメ サティーヌ」「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERSII 植物図鑑」(ともに青幻舎)など。http://azumamakoto.com

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