わたしの みつけかた

<1>サンアンドムーンヨガ、リザ・ロウィッツさん「40歳で女性になった」

  • リザ・ロウィッツ 吉澤 朋
  • 2018年11月30日

リザ・ロウィッツさん(撮影/篠塚ようこ)

東京・五反田にあるヨガスタジオ「Sun & Moon Yoga(サンアンドムーンヨガ)」のオーナー、リザ・ロウィッツさんの連載「わたしの みつけかた」が始まります。

リザさんは20代で初来日。その後、日本人男性と結婚、一度アメリカに帰国した後、再来日、2003年に日本初の「リストラティブヨガ」を教えるスタジオを開設しました。その後、日本で養子を迎えたことなどを自伝的にまとめて出版した小説「In search of the Sun」の一部を日本語に訳し、ヨガのポーズと合わせて、10回にわたってお届けします。

「40歳で、女性になった」というリザさん。連載開始にあたり、原文翻訳者で友人でもある吉澤朋さんがリザさん本人にインタビュー、その言葉の意味を伺います。

    ◇

ヨガは体だけじゃなく、心まで変える

 リザが1990年代初めに日本に来てから、もう30年近くになるのですね。

リザ そんなになる!? 驚いた。一度アメリカに戻って過ごした時期もあって、その後、夫婦で再来日した時に開いたヨガのスタジオが今年で15周年になります。本当言うともともとは本を書きたくて、ヨガの先生とかスタジオオーナーになりたいと思っていたわけではないし、今でも実はそう(笑)。

でも誰よりも私がそういう場所(=リストラティブヨガができる場所)を必要としていたんです。夫がアメリカから日本に戻ることを決めた時、私は、もしこのせわしない街に戻ってくるとしたら、リストラティブヨガをできる場所が必要、ってまず思ったの。私がこんなに必要としているなら、もしかしたら東京に住む人たちも必要としているんじゃないかな?って。特に、日本ではストレスを内側にため込むことが多いでしょ? 絶対必要なはずだと。

 リストラティブヨガは、一般的なヨガと、どう違うのでしょうか?

リザ 体の奥深くで固まっている緊張をほぐし、エネルギーとバランスを本来の状態に戻す(=restore)のが、リストラティブヨガです。一般的なヨガよりも、ひとつのポーズを保つ時間が長いこと、ポーズをとるときに体のすべての部分が支えられた状態なのが特徴です。体を支えるのは、毛布、ボルスターやブロックと呼ばれる様々な形・素材の道具です。

神経系を穏やかにする効果があり、関節や筋膜も柔らかくします。能動的に動くヨガとは正反対の、身体が一切無理をしないリストラティブヨガは、忙しい現代を生きる私たちにとっては不可欠な「ゆるめる」要素だと感じています。

 リザの本“In search of the Sun”には、ヨガをすることでリザが変わっていく過程が書かれていて、ヨガはただ体を健康にするだけじゃなく、心までこんなに変えるんだ、というのが私には驚きでした。たとえば、リザが苦手としていた「ラクダのポーズ」のエピソードがありますね。ここでは、自分が何となく嫌だなと感じていたポーズに取り組むよう勇気づけてくれた先生がいて、そのお陰で良い方向に変われた過程が描かれていますね。

リザ 良い先生は自分が成長できるように背中を押してくれるんだよね。私は、子供の頃いじめられて暴力を振るわれたこともたくさんあったから、いつも背中と肩を丸めて自分を守る防御の姿勢がクセになってたの。そのせいか、私のヨガの先生は優しかったんだけど、「ラクダのポーズ」(体を後ろに反らせて胸を開く)を何度も私にさせたのね。私はそのポーズが嫌だったんだけど。

 つらかった?

リザ もう本当に! 死ぬかと思うくらい、怖かった。何か起こりそうな気がして。でも、私の先生は、その怖さを受け入れられるよう、何度もそのポーズに優しく導いてくれたし、それだけじゃなく、そこから湧き上がる私の感情も受け止めてくれた。悲しみとか、恐れとか、すごくいろんな感情が湧き上がってきたから。そうやって受け止めてくれる先生がいることで、私も安心して今まで避けてきた過去や恐れに向き合うことができるようになった。向き合えると、手放すことも、解放することもできるようになるんだよね。

「私の人生を作ることができるのは私だけ」と気づくこと

そこで、今回のテーマの「女性になること」なんだけど。私にとって、女性になること、っていうのは過去の痛みとか失敗とか、完璧じゃない部分も、幸せな部分も、傷つきやすい部分も全て私のものとして受け入れて、「私の人生を作ることができるのは私だけ」と気づくことだった気がします。

 何かきっかけがあったんですか?

リザ フランス語で、「女性になるには時間がかかる」っていうことわざがあるんだけど、その通りって思う。40歳っていうのは、ちょうど今まで家族とか周りのために尽くしてきた女性が、ふと「残りの人生をどう生きよう?」って思うときかもしれない。

私の場合は、ずっと抱えていた心臓の病気の影響もあって、ある朝ふと目が覚めた時に「もしかしたら私に残されている時間は、そんなに長くないかもしれない」と気づいてしまったの。「だったら残された時間で何をしよう」と自分に問いかけたのね。

40歳って、ちょうど今まで生きてきた人生と、これから先残されている人生の中間地点とも言えるよね。人生という船の舵(かじ)を取るのは自分だと気がついて、自分の心が求めることに、優先順位を与えられるようになる時期かもしれない。それが私の場合は、「母から子に注ぐ無条件の愛というものを、自分も体験してみたい」ということでした。

私の母親も、ちょうど40歳で離婚して、大学に戻ったのよね。全く違う人を見てるみたいだった! 花開いたみたいな。それまでは、家でみんなの面倒を見ながらいつもイライラしている母親しか見ていなかったから。

 リザ自身も、自分は結婚するとは思っていなかった、って言ってましたね。

リザ 幸せな結婚生活を子どもの頃見てきたとは言い難いから。結婚って、あるべき姿がひとつだけあって、それにはまらないと全てが台無しになると思ってたの。結婚はお互いを縛ることだと思ってたし。

まして日本人男性と。私が持っていた「自由」を大切にする西洋的な考え方と、日本の伝統的な結婚の価値観とか、女性に求められている社会的な役割とかは相容れないと思ってた。自由を奪われると思ってたのね。

でも、結婚した相手・省吾は、成功か失敗の二者択一ではない、中間のグレーゾーンがあるって教えてくれた。独立した2人の人間でありながら、お互いの関係が有機的に育つような結婚があるって。

 リザもすごいけど、省吾さんもすごいよね! 2人が付き合っていた頃、リザがアメリカに帰るって一人で決めちゃった時、一生会えなくなるかもしれないけど、静かにリザの決断を受け止めてくれたと、本にも書いてありました。

リザ 結婚してからもその姿勢は変わらないよ。例えば東日本大震災の時にもたくさんの外国人が自分の国に帰ったでしょ? その時も「もし君がそう決めるのだったら、帰国も仕方ないね」って。あれは、さすが省吾! って思った。

 そんな省吾さんだからこそ、国際結婚にも挑戦できたっていう面もあるんですね。もちろんスタジオ経営も、養子縁組も。どれも簡単ではなかったと思うけど、成し遂げるエネルギーはどこからくるのですか?

リザ 不思議なのだけど、壁にぶつかる度に、自分でもどうしようもないくらいに、次に進まなきゃ、っていう力が背中を押してくれる感じなの。

それと、私はもともと作家になりたかったけど、なかなかうまくいかなくて。その夢を一旦諦めて、ヨガに専念したことが結果的には作家への道を開いてくれた。夢は握りしめすぎるよりも、ちょっと手放したくらいの方が、かなうのかも。

  

自分の声に、耳を傾けてほしい

 この連載を読んでくれる人、特に女性に、メッセージはある?

リザ 自分の人生を作るのは私自身、っていうことかな。人生というキャンバスにどんな絵を描くのかは自分自身だから、自分の声に耳を傾けてほしい。

 意外と難しいですよね。

リザ 難しいし、その声を聞くだけでなくて、きちんと認めてあげることはもっと難しい。私も、(ヨガスタジオを東京で開くという声が)聞こえてからしばらくは無視し続けたから。いつか聞こえなくなるだろうと思って。でも実はそれがストレスになるんだと思う。本当は、その声を無視し続けることの方がつらくて、1回その内なる声に従って、流れに任せた方が楽なこともあるみたい。

 どういう時にその声が聞こえるの?

リザ 心が静かな時かな。別に10日間のリトリートに行ったりしなくても良いの。でも、静かに自分に聞いてみる「何が欲しいの?」って。

 行動に起こすのは怖いよね。

リザ 怖いのは良いことだよ! 今までやったことのないことをしようとしているっていうことだもん。もともと恐れを知らない人は勇気もいらないでしょ。死ぬほど怖いけど進んでみる、そういう人のために勇気はある。今、次のステップが怖いと思うなら、それは良いこと。何かを始めようとしている印ですね。

(撮影/篠塚ようこ)

※この記事は、リザさんが主催する「サンアンドムーンアカデミー」の開講に際して行われたインタビュー、および2人の間で行われたリハーサル・インタビューから抜粋・一部加筆のうえ、再編集して構成されました。

>>第2回につづく(12月上旬更新予定)


PROFILE

リザ・ロウィッツ

写真

2003年設立、東京・五反田にあるヨガスタジオ「Sun & Moon Yoga(サンアンドムーンヨガ)」主宰。ヨガ、マインドフルネス、瞑想(めいそう)を25年以上に渡って伝えている。生徒は子供、大人、ガチガチに体の硬いビジネスパーソンから、アカデミー賞受賞俳優まで幅広い。ヨガやマインドフルネスといったテーマで20冊以上の著作を持ち、受賞歴も多数。現在も定期的にヨガのクラスやワークショップを国内外で開催し、独自のヨガの世界を発信している。
Sun & Moon Yoga
http://lezalowitz.com/

吉澤朋

写真

ライター・翻訳者、東京都の国際広報支援専門員でもある。子宮筋腫を患ったことをきっかけに自身の身体・健康と向き合うようになり、リストラティブヨガと出会う。
自身も国際結婚の体験者であり、「女性になること」を探索中。

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リザ・ロウィッツ

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2003年設立、東京・五反田にあるヨガスタジオ「Sun & Moon Yoga(サンアンドムーンヨガ)」主宰。ヨガ、マインドフルネス、瞑想を25年以上に渡って伝えている。生徒は子供、大人、ガチガチに体の硬いビジネスパーソンから、アカデミー賞受賞俳優まで幅広い。ヨガやマインドフルネスといったテーマで20冊以上の著作を持ち、受賞歴も多数。現在も定期的にヨガのクラスやワークショップを国内外で開催し、独自のヨガの世界を発信している。
Sun & Moon Yoga

吉澤朋

写真

ライター・翻訳者、東京都の国際広報支援専門員でもある。子宮筋腫を患ったことをきっかけに自身の身体・健康と向き合うようになり、リストラティブヨガと出会う。
自身も国際結婚の体験者であり、「女性になること」を探索中。

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