このパンがすごい!

ワインに合う! 最高級の小麦使用「めくるめくパン」でパン飲み

  • 文・写真 池田浩明
  • 2018年11月6日

 話題の「パン飲み」(パンをつまみに酒を飲む)が堪能できるお店が大阪に誕生した。「塩フォカッチャ」が飛ぶように売れる人気のパン屋「パネ・ポルチーニ」はじめ、系列のイタリアンレストラン「タヴェルナ・ポルチーニ」や肉料理の「サルメリア・ポルチーニ」が路地に並ぶ「ポルチーニ横丁」に、新たにオープンした「ラッテリア・ポルチーニ」。

窓際に積まれたパンを薄くスライスしパン盛りが作られる

 「パネ・ポルチーニ」の旗手一夫シェフは、大行列店を作り上げながら内心では満足していなかった。「自分の作りたいパンで勝負できていない」。職人の腕がものをいうハード系のパンを世に問いたい思いに駆られていたのだ。

 でもそれは、現在の客層が求めるパンとはかけ離れている。旗手シェフは一計を案じた。まず、パン屋ではなく、パン飲み酒場を手がけ、ワインと料理とパンというトライアングルのおもしろさを知ってもらうことからはじめようと。

 「ラッテリア・ポルチーニ」のカウンターに座る。グラス一杯からリーズナブルに楽しめるナチュラル・ワイン、そしてパン。これだけで、「めくるめく時間」を過ごすことができる。「パン盛り」を構成する、渾身(こんしん)のハード系は、生地でいえば3種類。それぞれ、旗手シェフが日本中を歩いて探した最高の小麦を使用、その特長を最大限にいかすよう作られている。

ディンケル

 まず、「ディンケル」。滋賀県で廣瀬敬一郎さんが作る古代小麦「ディンケル」を使用。焼き込んで焦がした表面が誘っている。ざくり。音とともに、激しく立ち上がる麦の香り。そして想定外だったのは余韻。隠し味の大豆粉によって作られる東洋的な不思議な香り、甘さ、かすかな苦み、旨(うま)み、種の酸味。それらが戯れあい、からみあうイメージが頭の中で繰り広げられるめくるめくような時間。そのあいだじゅう、私は現実から離れ、「いっちゃってる」状態だった。

 その中に、赤ワインにあるような発酵の香りを感じてどうしても飲みたくなる。ボジョレーのガメイを口に含めばこちらもまた頭の中に芳醇(ほうじゅん)なイメージを描きだし同じようにめくるめく。まるで時がとまったような「酒場の時間」に私はいざなわれていた。

 旗手さんはこのパンを低温下で28~30時間という超長時間発酵によって作り上げる。

「麦のうまさって寝かさんと出ないと思っていて」

 小麦の香りを十二分に引き出すことはもちろん、「めくるめく」余韻を作り出すため、発酵時間を変え、冷蔵庫の温度を変え、風味のあらゆるファクターにバランスをとる。

「ルヴァン種のphも計るし、なめたときの感覚も大事にするし、すごくめんどくさいことをやってるんですよ(笑)。グラム数も、こねあげ温度もぜんぶいっしょにしているのに、それでも毎日ちがうものになる。だからおもしろい」

 「全粒粉」は完成までなんと1年をかけた。この後味もめくるめくものだ。カナダ産オーガニック小麦全粒粉を使用。香り高いだけでなく、ふすままでもがかぐわしく、クリアである。ルヴァン種(同じカナダ産小麦から起こした種)を加えることで、コクと酸味を絶妙に寄り添わせれば、振り子のようにさまざまな味の間を揺れ動きながら長く長く変化が繰り広げられる。

 ワインに合う斬新なサンドイッチも発明された。「しめ鯖と黒糖ジンジャーブレッド」。長崎のハーブ鯖、ストラッチャテッラというフレッシュチーズ、葉にんにくのジェノバソースといった個性の強い面々のつばぜり合いを、黒糖とジンジャーのまろやかな甘さがなだめ、調和を作り出す。これこそサンドイッチにおけるパンの役割ではないか。

 旗手シェフの原点。パネ・ポルチーニ開店のきっかけとなった、タヴェルナ・ポルチーニの厨房(ちゅうぼう)で焼いていた自家製パン。湯気が出るような焼きたてパンをオーブンから出すなりすぐ手渡すと客は「ものすごくよろこんでくれて」。そんなライブの感動を今度はパン飲みカウンターで演出する。

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■ラッテリア・ポルチーニ
大阪府大阪市福島区福島5-11-3
06-6450-1915
18:00~23:00(土・日は15:00~23:00)
木曜・第2第4水曜休み
http://www.porcini.jp/reserve_lat.html


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PROFILE

池田浩明(いけだ・ひろあき)ライター

写真

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰

日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

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池田浩明(いけだ・ひろあき)ライター

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

BOOK

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写真

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