東京ではたらく

ウェディングプランナー:宇田彩乃さん(30歳)

  • 文 小林百合子 写真 野川かさね
  • 2018年11月8日

  

職業:ウェディングプランナー
勤務地:東京都渋谷区
仕事歴:6年目
勤務時間:フレックス制
休日:不規則

この仕事の面白いところ:半年間かけて準備したものが形になる瞬間に立ち会えるところ
この仕事の大変なところ:常に新しいアイデアを生み出さないといけないところ

    ◇

東京・渋谷にあるトランクホテルでウェディングプランナーとして働いています。ウェディングプランナーは、どんな結婚式を作りたいかというコンセプト作りから、披露宴の内容、会場セッティング、お料理、お花、ドレス、引き出物など、結婚式にまつわるあらゆることをご新郎ご新婦様と一緒に考えていく仕事です。

トランクホテルは2017年5月にオープンしたブティックホテルで、ホテル内にチャペルと披露宴会場を備えています。トランクホテルではプランナーのことを「ライフファシリテーター」と呼んでいるのですが、直訳すると「人生を導く役割」という意味です。

プランナーは結婚式を成功に導く仕事ではありますが、式の準備期間や結婚式当日だけにとどまらず、その後のご夫婦の生活、人生まで豊かに彩るお手伝いができたら。そんな願いや使命感を込めた言葉です。

ちょっと大げさかもしれませんが、結婚式というのはご新郎ご新婦様にとって夫婦としてのスタートラインなのだということを、私も仕事を続ける中で身にしみて感じてきました。ですから今は、その責任の重さを感じつつも、それ以上のやりがいを持って仕事に向き合えているように思います。

「ソーシャライジング」をテーマに掲げるトランクホテル。バーラウンジは一般に開放されており、昼間はカフェとして利用する人も多い

結婚式を挙げられた経験のある方はその大変さをよくご存じかもしれませんが(笑)、結婚式の準備というのはだいたい本番の半年ほど前から始まることが多いです。式場が決まったら私たちの出番で、ご新郎ご新婦様とは通算で5~6回ほどの打ち合わせを経て、本番の日を迎えます。

まず初回の打ち合わせは、「2人がどんな結婚式をしたいか?」という結婚式のアウトフレームを決めます。最初の一歩ですが、やっぱりここが一番大変というか、みなさん悩まれるところですね。この時にばっちりイメージをお持ちの方は本当にまれで、全くの白紙状態からお話が進むことも多いです。

プランナーの腕の見せどころというか、個性が出るのもやっぱりこの時だと思います。例えばこれまで手がけた結婚式のお話をして、「こんな感じはどうですか?」とイメージを膨らませていただくこともあります。でもそれだけでは、お二人らしい式にはならないと思います。

新郎と新婦。同じ人物がこの世にひとりとしていないように、2人の結婚式もまた世界にひとつだけのものです。だからこそ2人らしい式にしてほしい。そのお手伝いをするのが私たちの仕事ですから、まずはプランナーがお二人のことをよく知るところから話を始めるわけです。

式を間近に控えたご新郎ご新婦様と直前打ち合わせ。式当日の持ち物や段取りを綿密にチェックする。「靴下はご自身で用意されますか?」など、細かい部分も抜かりなく確認

そこでまず、初回、もしくは2回目の打ち合わせではお二人の性格や趣味、出会いなど、パーソナルなことを伺います。その上でお二人らしい式につながるキーワードを3人で探っていきます。

例えば猫がご縁でお付き合いがスタートしたというカップルがいらっしゃったとします。単純に考えると「じゃあ会場や招待状に猫のモチーフをあしらいましょうか?」というアイデアになるかもしれませんが、そこはもう少し突っ込んで、「猫のどういうところがお好きなんですか?」とお尋ねしてみます。

そうすると「う~ん、気まぐれなところ?」とか、「目が奇麗なところ?」とか、お二人からご意見が出てきますよね。「お二人の猫ちゃんはどんな目の色なんですか?」と尋ねて、例えば「とっても奇麗なターコイズブルーなんです!」と返ってくれば、もしかしたら会場のキーカラーがそのターコイズブルーになるかもしれません。

そんな感じで、ざっくばらんなお話を通して、お二人が日常の中で大切にしているもの、かけがえのないものを抽出していくんです。日常というのは何げない日々の連続なので、好きなものや大事にしていることを見過ごしてしまっているかもしれません。そこを自分たちが介在することで明確にしていけたらすてきだなと思っているんです。

全体のテーマが決まったら、式の進行内容を決めていきます。結婚式というと上司のスピーチがあったり余興があったりというのが定番でしたが、最近はそうした型にとらわれず、自由に構成される方も増えてきました。

牧師さんを呼ばず、2人で考えてきた誓いの言葉を読み上げて、参列した方々が結婚の証人になるという人前式というのもあります。

ルーフトップにあるチャペルはシックで大人っぽい雰囲気。周囲は緑に囲まれていて、渋谷のど真ん中とは思えないすがすがしさ

そんな風に近年、「結婚式の在り方」そのものが変化してきているなというのは肌で感じます。これまで結婚式というのは新郎新婦の門出をみんなで祝うというものでしたが、最近では逆に、新郎新婦がお世話になった方々を「おもてなしする」という場に変わってきているように思います。

ゲストがゆったりと食事をしながら純粋にパーティーを楽しめる場にしたいというご新郎ご新婦様も多くて、その場合には進行の構成にゆとりをもたせたり、披露宴会場によってはテラスでBBQをすることなんかもあります。

お料理が決まったら次は会場を彩るお花やブーケ、そしてドレスも決定していきます。引き出物も決めないといけませんね。怒涛(どとう)のように「決めなくてはいけないこと」が押し寄せてくるのですが、この頃になると新郎新婦も理想とする式の形が何となく見えてきているので、私はとにかくお二人のTO DOの進捗(しんちょく)管理と手配漏れがないようにと手配物の確認を細かくしていきます。

そして最終打ち合わせとリハーサルをして準備は終了。あとは当日を待つばかりです。私の当日の仕事は、これまで準備してきたこと全てが正確かつスムーズに進行されているかどうかをチェックすること。当日は朝から各セクションとコミュニケーションをとりながら入念に確認をするわけです(笑)。


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PROFILE

小林百合子(こばやし・ゆりこ)編集者

小林百合子

1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

野川かさね(のがわ・かさね) 写真家

野川かさね

1977年神奈川県生まれ。山や自然の写真を中心に作品を発表する。クリエイティブユニット〈kvina〉、自然・アウトドアをテーマにした出版・イベントユニット〈noyama〉の一員としても活動する。作品集に『Above Below』(Gottlund Verlag)『with THE MOUNTAIN』(wood/water records)、著書に『山と写真』(実業之日本社)など。
http://kasanenogawa.net/

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写真

1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

野川かさね(のがわ・かさね) 写真家

写真

1977年神奈川県生まれ。山や自然の写真を中心に作品を発表する。クリエイティブユニット〈kvina〉、自然・アウトドアをテーマにした出版・イベントユニット〈noyama〉の一員としても活動する。作品集に『Above Below』(Gottlund Verlag)『with THE MOUNTAIN』(wood/water records)、著書に『山と写真』(実業之日本社)など。
http://kasanenogawa.net/

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