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高2男子を“育てる”女たちが魅力的。ロバート・ハリス『JJ 横浜ダイアリーズ』 

  • 文・間室道子
  • 2018年11月19日

撮影/馬場磨貴

  • 『JJ 横浜ダイアリーズ』ロバート・ハリス 著 講談社 1944円(税込み)

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オトナの読書なので、「主人公が好きだからよい小説/共感できないから嫌な小説」という分け方はしない。心底許せない登場人物なのに心に残り、何度もその人のことを考える作品もあれば、いい人がでてくるいい話なのだけどちっとも関心が持てず途中でブン投げる本もある。こういうのがオトナのだいご味、と思っていた。

しかし、『JJ 横浜ダイアリーズ』を読んで、「主人公を好きになるって、やっぱりすばらしい! 気持ちよく読み進められる!」とあらためて感動……。

「セックス、タバコ(そして酒)、文学」

舞台は1960年代の横浜。JJ高原は高校2年生で、カトリック系のインターナショナル・スクールの男子校に通っている。

男の子の青春小説は、「セックス、タバコ(そして酒)、ロックンロール」になりがちだが、本書は「セックス、タバコ(そして酒)、文学」であるのが面白い。シネマや音楽も出てくるけれど、合わせて主人公がどういう状況で何を読んでいて、どんな感想を持ったか、こんなにていねいに書かれている作品は珍しいと思う。

そしてなんといってもJJを取り巻く女性が魅力的。初体験の相手であるお手伝いさんのよっちゃん、あなたはたくさんの旅をすることになると予言した占師の京子さん、親友のGFであるホリベーとパメラ、初恋の相手にして最後まで謎を残した女子大生の優子、けがの手当てをしてくれた堀内先生、母親と双子の妹エリカ。彼女たちは大事な場面で、JJの前に「女」として立つ。

“え、お母さんも「女」に?! きもちわるー”と思う人もいるでしょうが、母が女として立つときは、息子を一人前の男として扱う時である。

停学をくらって自宅謹慎中のJJが、シェークスピア演劇『十二夜』の英語公演を控えている優子のために家を抜け出すエピソードは印象的だ。GFに英語を教えたらすぐ帰る、とメモを残して家を出たJJは、そのとおりに帰宅し、翌朝母に謝る。するとお母さんは、本当に悪いと思っているのかと聞き、「いや、思っていない」とJJが正直に言うと、「なら謝るのはやめなさい」と言って、大きな伸びをするのだ。
こういう女たちが、JJを成長させていく。

どこの誰が決めたかわからないけれど皆がなんとなく従っている規則ではなく、「マイ・ルール」を決め、まっすぐ歩いていくJJのまなざし、当時の文化や流行の羅列ではなく、著者ロバート・ハリスさんの体を通ってきた曲、映画、本がまさに「マイ・ジェネレーション」としてふつふつと伝わってくる、熱くてクールな小説。おススメです!


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PROFILE

間室道子(まむろ・みちこ)

写真

代官山 蔦屋書店の文学コンシェルジュ。雑誌などで書評連載を多数持ち、年間700冊以上読むという「本読みのプロ」。お店では、間室手書きPOPが並ぶ「間室コーナー」が人気を呼ぶ。

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