朝日新聞ファッションニュース

新しさより、らしさ発信 19年春夏パリ・コレクション

  • 2018年11月14日

セリーヌ

デザイナーの作風・ブランドの伝統を重視

今月2日までの9日間、2019年春夏パリ・コレクションが開かれた。今回は大がかりな演出に時代への思いを込めたり、ブランドの伝統やデザイナー自身のスタイルを重視したりする表現が目立った。デザインの新しさを競わない傾向が強く、あえてデザインをしない試みもあった。

メンズ市場意識

最も話題を呼んだのは、カリスマ的なデザイナー、エディ・スリマン(50)が就任したセリーヌだった。スリマンは、2000年代にディオール・オムで、10年代半ばにはサンローランでも、黒白を基調にした極細でシンプルな独特の作風で人気を博した。前任の女性デザイナーのフェミニンなミニマルスタイルを一掃するように、今回もそんな“スリマンスタイル”を全開した。ブランド初のメンズも登場した。

ショーは薄暗い照明の中、フランス共和国親衛隊の鼓笛隊の演奏で始まった。テーマは「パリの夜」。ドレス以外はほぼ男女兼用のユニセックスなデザインで、主に10代のか細いモデルが着ていたが、ショー後の展示会で見るとさほど細身でもない。色や素材違いなどの商品展開が非常に豊富で、メンズ市場にかける強い意気込みが伝わってきた。「これまでのセリーヌのファンを置き去りにするのか」との声もあったが、スリマンは「なぜ私らしさを放棄しなければならないのか」と地元紙に語った。

グッチ

世界のトレンドをここ数年リードしてきたグッチは、今回だけ発表の場をミラノからパリに移した。80年代調のイチゴ柄のシャツにヒョウ柄のパンツの組み合わせといったヴィンテージ調や、キッチュなど様々な要素をミックスした得意の作風を貫いた。

体験型のショー

クリスチャン・ディオール

プロのダンサーが流麗な踊りを見せる中、バレエのチュチュ風のチュールのドレスを並べたのはクリスチャン・ディオール。2年前に初の女性デザイナーが就任以来、フェミニズムに題材を得てきたが、今回の着想は「ダンサーの躍動的な体の美しさ」からという。

バレンシアガ

バレンシアガはトンネル状の会場の全面に、崩壊した高層ビルが次々と焼け落ちてやがて灰色一色の世界に変わるなど、迫力満点の映像を流しながらのショー。「ファッションやショーの意義を見直し、印象的な体験型のショーを」とのデザイナー、デムナ・ヴァザリアの意向という。

シャネル

シャネルは本物そっくりの波が打ち寄せる砂浜を屋内に設置して、やや大きめの肩やフレアの袖のシャネルスーツを披露。サンローランは、エッフェル塔下の公園に水を張ったランウェーを作り、近年のサンローランらしい黒地のミニドレスや水着を着たモデルを歩かせた。

サンローラン

一方、奇抜な演出こそないが、ブランドの強みや職人技を生かして、気負いのない爽やかな作品をそろえたブランドが光った。

[左]エルメス、[右]ドリス・ヴァン・ノッテン

エルメスは、パリ郊外のロンシャン競馬場で空を映す鏡を背に、極薄の革やステッチなど独自の手法を用いた軽やかな作品を披露。ドリス・ヴァン・ノッテンは「過去への郷愁でも、未来への執着でもない、今の表現」として、パーカなどのワークスタイルに、クラシックな花柄を組み合わせた。

内面をデザイン

コムデギャルソン

ここ5年間、オブジェのように抽象的な作品を発表してきたコムデギャルソン。ショー直前、一部の報道陣に配った手紙には「次の新しさが見つかりません。これからはブランドの内面的な中身をデザインします」との内容が書かれていた。作品は、ベーシックで心地よさそうなウールのスーツに似た、上下つなぎの黒い服。ただ、おなかの部分がハサミでばっさりと切ってある。デザイナーの川久保玲は「デザインをあえてしないことがデザイン。シンプルな服を素肌に着るという一番シンプルな方法に行き着いた」と語った。

レディースだけだったショーに、市場に伸びしろのあるメンズも合体させるブランドが増え、より多くのブランドがショーをライブで世界に配信するようになった。客席にはセレブやSNSでの発言が影響力を持つインフルエンサーが集められ、中国を筆頭に新興のアジア勢がさらに増えている。新しいデザインよりブランドやデザイナーのスタイルを優先する今回の傾向は、そんな変化への対し方の一つなのだと思う。

(編集委員・高橋牧子、写真は大原広和氏撮影)


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