川島蓉子のひとむすび

<56>元気になるリゾートホテル、ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄

  • 川島蓉子
  • 2018年12月5日

海の中に突き出た小島のような立地にある「ハイアット瀬良垣」

8月21日、沖縄本島の恩納村に「ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄(以下、ハイアット瀬良垣)」がオープンしました。総支配人を務める野口弘子さんとは、「パーク ハイアット 東京」時代からの知り合い。その後「ハイアット リージェンシー 箱根リゾート&スパ(以下、ハイアット箱根)」の総支配人となってからも、良いおつきあいを続けてきました。

その野口さんから昨年の初夏、「沖縄で新しいホテルを開業することになったの」と柔らかい笑みを浮かべながら言われた時、箱根が寂しくなるという思いとともに、同い年の彼女が新しい挑戦をすることに、「あっぱれ!」と拍手喝采したのです。

あれから1年あまり、野口さんはどんな新しいホテルを作ったのかとオープニングセレモニーに参加しました。

那覇空港からクルマで1時間弱行くと、青々とした海に向かって「ハイアット瀬良垣」が現れます。立派な構えのゲートから専用道路を進んで行くと、ぐるりと海に囲まれた島のようなところにホテルが建っていて、「瀬良垣アイランド」と名づけた意味がわかりました。

入り口からロビーのゆったりさで、身体も心もリラックス気分に

ぴかぴかの新品でありながら落ち着いた佇(たたず)まいの建物には、リゾート地にふさわしい、かすかに甘さを含んだ空気が流れています。天井高があって広々としたロビーに入ると、自分の身体と心がリラックスしていくのがわかります。野口さんの“女将(おかみ)さんのような笑顔”はもちろん、降り注ぐ太陽の光や、木や草が宿している生命力のおかげでしょうか、気持ちが開放されてエネルギーが心身に入ってくる感じがしました。

「リラックスと同時に、驚きや楽しさでエネルギーがあふれてくる。そんな“元気になるリゾートホテル”を目指そうと思っています」という野口さんの言葉が、実感として伝わってきたのです。

チェックインを済ませ、いざ客室へ。344室もある大きなホテルなので、エレベーターホールから各客室への通路が長く延びています。が、そこにもちょっとした楽しさが――突きあたりの窓からさんさんと入る光が、微妙な凹凸をつけてある床にあたって陰影を生み、海辺の路地裏を歩いていくような気分になれるのです。こんな細かい気配りも、このホテルならではと思い及びました。

どの部屋にもオープンテラスが付いていて、海をのぞむことができます

過去における野口さんの仕事は、独自性を追及しながら、高みを目指してきたものばかり。「ハイアット箱根」の時は、「箱根の我が家」をコンセプトに、ラウンジを「リビング」、レストランを「ダイニング」と名づけ、家でくつろぐような温かくゆったりした場とサービスで人気を集めました。

ここ瀬良垣でも「沖縄のゴージャスなリゾートホテル」に留まることなく、徹底した独自性へのこだわりが伝わってきます。「恩納村は、類いまれな美しい自然を財産としている最高の立地。ただ、そこに頼るのではなく、あくまで人の魅力によって、お客様に元気になっていただくこと、つまり、人、サービス、コンテンツでお客様をよびたいのです」。素晴らしい環境であることを前提に、ハードとしての自然や建物に甘んじることなく、ソフトとしてのホテルにこだわりました。

さまざまなアクティビティーが用意されています

このホテルでは毎日、さまざまなアクティビティーが行われています。海を感じながら朝と夕方に行う「モーニングヨガ」や「サンセットヨガ」、シーカヤックツアー、シュノーケル、スタンドアップパドルボード体験など、プロのインストラクターによる丁寧なプログラムが豊富に用意されているのです。琉球の伝統楽器である三線を親子で楽しく学べる「親子で三線教室」など、地元ならではのメニューも充実しています。
また、「スパ はなり」では、琉球に伝わるハーブを詰めたハーブボールを用いるマッサージ「琉球コンプレス」など、オリジナルメニューを盛り込んであります。

温めたハーブボールを使った琉球コンプレスは、身体と心をゆるめてくれます

体験したスパでは、ここならではの施術「琉球コンプレス」をお願いしました。温めたハーブボールを身体に押しあてると、じんわりした熱が身体の芯まで緩めてくれるようで、心身ともにリラックスできました。
施術後、担当してくれたセラピストと、体調を整える食事やストレッチなどについておしゃべりしたのですが、知識やノウハウというより、そのセラピストのやわらかい口調から、個人としての私への思いやりが伝わってきました。

ホテルでどんな体験をしたかは、滞在にまつわる大事な要素であり、そこには必ず人がかかわってきます。レセプション、ロビー、レストラン、スパ、客室回り、それぞれの場で働いているホテルの人たちの中には、深い技や心の体得はこれからといった若者もたくさんいて、はしばしでちょっとした未熟さや素人っぽさを感じる場面もありました。ただ、相手の目をしっかり見ながら、心からの笑顔と一緒に、「おはようございます」「何かお手伝いできることはありますか」と言葉をかけてくれる姿勢そのものが、マニュアルだけにのっとったものではない。だから、お客さんを元気にしてくれると感じたのです。

野口さんが目指しているのは、「ホテルが沖縄への旅の動機となり、滞在そのものが旅の楽しさとなるディスティネーションホテル」――それがかたちとなって、動き出したという確かな実感がありました。

ただ、よちよち歩きを始めたホテルを、大きな二つの台風が直撃し、大きな傷跡を残したのです。次回は、そこを野口さんはどう乗り越えようとしていっているのかに触れたいと思います。

■ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄

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PROFILE

川島蓉子(かわしま・ようこ)

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伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。
1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。多摩美術大学非常勤講師。日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)などがある。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。
ifs未来研究所 http://ifs-miraiken.jp

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