このパンがすごい!

元寿司職人のサンドイッチ屋、新店はカンパーニュサンドで勝負/CAMELBACK RICH VALLEY

  • 文・写真 池田浩明
  • 2018年12月4日

BLTサンド トーキョースタイル

 この連載の第1回で取り上げた「CAMELBACK sandwich&espresso」に、2号店「CAMELBACK RICH VALLEY」が誕生した。

 1号店は、パン激戦区である代々木周辺3店舗(カタネベーカリー、タルイベーカリー、365日)のバゲットをメニューごとに使い分ける「バゲットサンド」で衝撃を与えた。今度は、カンパーニュ。元寿司(すし)職人、成瀬隼人さんが、しゃりをカンパーニュに持ち替え、腕をふるう。

いわしのサンドイッチ

 CAMELBACKの至芸、「いわしのサンドイッチ」。具材のすべてが連鎖する。引き金を引くのは、カタネベーカリーの田舎パン。成瀬さんが、霧吹きとホットプレート(!)を駆使し、表面かりかり、中身はぷにゅっと、うるおったままに焼きあげる。それはジューシーに溶け、ルヴァン種の熟成香、全粒粉の香りが漂いだせば、いわしの極上の香りが召喚される。芳醇(ほうじゅん)でありながら、ただただうつくしく。いわしの色気をさわやかに引き立てるのは野菜。パクチー、それからタマネギ、ミョウガ、大葉というツマ。さすがは元寿司職人。それらは極薄に切りそろえられているから、さわさわと舌をくすぐって快い。

 梅肉かと思わせるような旨味(うまみ)と酸味をちょちょぎらせ、イワシに抜群の興を添えるのは、自家製のドライトマトオリーブ漬け。

「イタリアのドライトマトを、オリーブオイルとオレガノ、バジルに漬けています。このレシピ、イタリアの女の子から教えてもらったものなんです。毎年日本に遊びにきて、必ずうちの店に寄ってくれる。『作ってきたよ!』って、このドライトマトを持ってきてくれた。とってもおいしかった」

パンを焼く成瀬隼人さん

 ニューヨーク、ホノルル、インドネシア、フィリピン…世界中からCAMELBACKに外国人がやってくる。「困ったら助けてくれるし、サンドイッチおいしいよ」。そんな口コミが広がっているのだ。

「あったかいコーヒー、愛のこもった食事。食べ物を通じて笑顔にするって、とっても素敵(すてき)なこと。SNSではとって代われないものです」

 CAMELBACKが放つ、BLTサンドの2.0が、「BLTサンド トーキョースタイル」。国産豚を使った自家製ベーコンに、ルッコラ、スペアミント、ミックスリーフ、パプリカ。これは、肉と野菜の総合芸術だ。脂のパワフルさ、野菜のさわやかさ。芳香をまきちらすミックスリーフ。ベーコンがぶりっとはずんだかと思うと、なんともかぐわしくあふれだす豚の脂。

 それをさらに拡大解釈するのは、バルサミコ。仕上げに成瀬さんがひと垂らししているのをなめさせてもらった。まるで極上のデザートワインにはちみつを混ぜたかのような甘さ。

寿司屋の玉子サンド

 CAMELBACKの名前を一躍広めた、「寿司屋の玉子サンド」に、RICH VALLEY版が登場した。1号店では、コッペパンだったが、今度は甘いパンに。完全無欠のふわふわぶりを誇る卵焼きに、パンのぷるぷるぶりが唱和すれば、玉子の甘さと、パンの甘さ、ひと塗りしたフランス産発酵バターの甘さが相乗効果を発揮、この世のものと思えない甘美さが広がる。

 習得まで数年、毎日1時間以上もかけて焼き上げる卵焼きは元寿司職人ならではの仕事だ。

 いわしもそう。取り扱いのむずかしい新鮮な魚をサンドの素材にする店は稀(まれ)だが、元寿司職人にとってはお手の物。成瀬さんの手さばきを見せてもらう。ご近所の魚屋さん・魚力で仕入れたいわし。ハラワタや血合い、骨をとり、みるみる身がきれいになる。

「魚は水に弱い。水をとる。赤ちゃんといっしょです。痛くないように、丁寧に丁寧にやれば、信頼関係ができる。きれいにできあがってくれて、愛が伝わったんだなとわかる」

サンドイッチの包み

 愛が伝わったとき、おいしいサンドイッチができあがる。

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■CAMELBACK RICH VALLEY
東京都渋谷区富ケ谷1-9-23
8:00~17:00
月曜休み
https://www.facebook.com/camelback.tokyo/

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PROFILE

池田浩明(いけだ・ひろあき)ライター

写真

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰

日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

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池田浩明(いけだ・ひろあき)ライター

池田浩明

佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)

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