朝日新聞ファッションニュース

地平ひらいた2人の素顔 ~ヴィヴィアン・ウエストウッドとマルタン・マルジェラのドキュメンタリー映画(2作品)

  • 2018年12月26日

 ヴィヴィアン・ウエストウッドと、マルタン・マルジェラ。ファッション界に新たな地平をひらいた2人の素顔に迫るドキュメンタリー映画が、それぞれ公開される。

●「最強のエレガンス」
破壊と創造、パンクな人生

「最強のエレガンス」でのヴィヴィアン・ウエストウッド (c) Dogwoof

 日本でもよく知られるウエストウッドは、英国で1970年代、音楽とともにファッションで権力に抵抗した「パンクの女王」。77歳の今も現役で、環境保護などの活動家としての顔も持ち、自分の思いを社会に投げ続けている。

 「どの服もひどいわ。こうなったのは私のせいね」

 映画「ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス」は、ショーを目前に弱気な言葉を口にする姿を映し出す。カメラの存在を忘れるくらい、彼女は自然に正直にそこにいる。

 2人のパートナーとの決別、ブランド経営の失敗、テレビや業界で笑いものにされた過去。波乱に満ちた道のりが明かされるが、彼女自身は常に前を見て、他者への恨みも、成功への執着もないようだ。20歳以上年下で、公私ともにパートナーのアンドレアス・クロンターラーの才能を認め信頼していることにも驚く。

 服飾史家の中野香織さんは「赤裸々すぎるほどさらけ出すヴィヴィアンは器が大きい。作品だけでなく、人生そのものがパンク。彼女は一貫して、壊しながらも新しいものを作り出してきた。他人に笑われても意に介さず、やると思ったことを淡々とやっていく。周りの目ばかり気にする生き方がいかに無意味なのか、気づかせてくれる」と話す。

 28日から角川シネマ有楽町ほかで順次公開。(神宮桃子)

●「マルジェラと私たち」
奇抜な発想に証言で迫る

「マルジェラと私たち」の一場面。かつてのショーの模様を撮影した写真 (c) 2017 mint film office / AVROTROS

 80年代末に彗星(すいせい)のごとく現れ、90年代のファッション界を席巻、そして2009年に突然表舞台から姿を消した天才デザイナー、マルジェラ。当時からメディアに露出せず、実像はベールに包まれていたが、映画「We Margiela マルジェラと私たち」は周囲の証言によって、その人間性とクリエーションに迫っている。

 古着を解体して再構築するなど、新しい手法を次々と提案してファッショニスタに愛されたマルジェラ。パリ中心部の建物ではなく、郊外の空き地でのショーなど、奇抜な見せ方も注目された。

 匿名性にこだわり、スタッフの集合写真にも収まらなかった。映画では、マルジェラが身を削るように創作に向き合い、やがて消耗していった経緯が浮き彫りになっている。

 ファッションジャーナリストの平山景子さんは新人時代のマルジェラと直接話し、「今まで誰かがやったようなショーにだけはしたくなかった」という言葉が印象的だったという。「その信念でマルタンはファッションの様々な約束事に挑戦した。それを支えたのがビジネスパートナーのジェニー・メイレンス。彼女なくして成功はなかった」と語った。来年2月8日から東京・渋谷のBunkamuraル・シネマなどで公開。(後藤洋平)


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