朝日新聞ファッションニュース

西陣織、手仕事の美を世界へ イッセイミヤケ、パリ・コレで「絣」

  • 2019年1月17日

モード×匠

 日本の伝統技術が生み出す高品質の素材を取り入れながら、最先端の装いとして発表する国内ブランドには、強い存在感があります。匠の技とモードを融合させる取り組みの現場を記者が訪ねます。

絣加工の作業をする葛西郁子さん=京都市上京区中書町

 西陣織の産地として知られる京都市上京区。昨年11月半ば、京町家が立ち並ぶ一角にある「葛西絣(かすり)加工所」では、イッセイミヤケが今年1月に出荷する男性服用の生地づくりが大詰めを迎えていた。デザインチームが「あばれ絣」と呼ぶ、不規則な染めが特徴的な素材だ。

 大正時代から受け継がれてきた「男(お)巻き台」という機械で経(たて)糸を整えて巻き上げると、鮮やかな柄が浮かび上がった。生地幅は1メートル。通常は着物の帯用として、約40センチ幅が大半だ。ここまで広い幅の生地を織ることができる機械は希少で、西陣で1台しかないという。

イッセイミヤケ パリ・コレで「絣」 新作でも

 「イッセイさんの生地は、素材がコットン。普段扱うシルクの糸に比べて太くて重く、扱いが難しい」。あるじで絣加工職人の葛西郁子さん(42)は丹念に糸の並びをチェックしながら、そう語る。綿は絹に比べて滑りが悪く、無理に巻き上げると切れてしまう。滑りを良くするためスプレーで油を吹きつけ、慎重に作業を続けた。

イッセイミヤケの18年秋冬コレクション

 葛西さんが手がけた生地が初めてパリのランウェーで披露されたのは昨年1月にあった、2018年秋冬コレクションだった。淡いグレーに白の模様が印象的なセットアップで、店頭に並ぶと早々に完売。同6月にあった、今年の春夏に向けたコレクションでは「あばれ絣」のコートとパンツをモデルが着用して歩いた。

イッセイミヤケの19年春夏コレクション

 伝統産業の現場では、後継者不足が深刻な問題になっている。西陣には絣加工職人が7人いるが、葛西さんは「私以外は70代と80代。見事な絶滅危惧種です」。前職は大学の非常勤講師だったが11年、そんな危機を知って職人に弟子入り。「美しい柄と、手仕事が伝わるぬくもりを感じるのが西陣織の魅力」と語る。15年に独立すると注目され、メディアの取材もいくつか受けた。

 長く生地素材の企画・調達を手がけてきたイッセイミヤケの担当者は、葛西さんの存在をテレビ番組で知り、「彼女のような若い人となら、また一緒に新しい絣が作れるのではないか」と直感したという。同社では80年代半ばにも西陣絣の服を発表したが、担当していた職人が他界して以降、作ることができなかった。葛西さんは「西陣絣を今とこれからの時代に生かすことが使命だと決意して独立した。とてもありがたい依頼だった」と振り返る。

 三宅一生は代表作のプリーツプリーズをはじめ、日本の生地の産地や職人を大切にして仕事を続けてきた。その精神は社内に浸透しているといい、今後も葛西さんらによる生地の服を作り続ける。17日にあるパリ・メンズの19年秋冬のショーで新作が発表される。

(後藤洋平)

 <ショーの写真はいずれも大原広和氏撮影>


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