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INTERVIEW

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いつの時代も輝く女性と「ロペ」誕生50周年

  • JUN 佐々木進社長 × スタイリスト 辻直子
  • Susumu Sasaki × Naoko Tsuji
  • 2018.4.19
写真・画像

 レディスファッションブランド「ロペ」が今年、誕生から50年を迎えた。時代とともにトレンドが大きく変わる中、ロペはどんな道を歩み、カルチャーを生み出してきたのか。
 ロペを展開するJUN代表取締役社長の佐々木進さんと、50周年を記念して発売されるコレクションのディレクションを担当するスタイリストの辻直子さんが語り合った。

文 中津海麻子 / 写真 馬場磨貴

南仏・サントロペをインスピレーション源に

半世紀前の1968年にロペが誕生した背景、経緯をお聞かせください。
佐々木 進 (以下、佐々木)
 50年代から70年代は、ファッションが一部の人のための特別なものから、大衆にどんどん広まっていきました。特に女性のファッション。家庭の主婦だった女性たちが社会に出るようになり、装いの用途も変わっていった。まさにファッションが激動していたとてもおもしろい時代に、ロペは生まれたのです。
辻 直子 (以下、辻)
 実は私は70年代のファッションが一番好きで、もっと知りたいという気持ちからスタイリストを目指しました。70年代は「フリーダム」の時代。世界中で女性が自由になり、外出したり人に会ったりするための洋服を求めるようになりました。ロペはまさにそうした時代に先駆けて生まれたブランドなのですね。
写真・図版
佐々木
 当時はアイビーに代表されるアメリカンカジュアルが全盛で、ヨーロッパ的なファッションを提案する身近なブランドが日本にはありませんでした。そこでロペは、ヨーロッパの「クラシカルエレガンス」をコンセプトに掲げました。
南仏の避暑地、サントロペが名前の由来だとか?
佐々木
 はい。60年代から70年代にかけてサントロペには都会の最先端を行く人たちが集い、海沿いのリゾートを楽しむという新しい文化が生まれました。リラックスしながらも都会的なセンスでリゾートファッションを楽しんでいる。このヨーロッパのライフスタイルやカルチャーを発信し、まさにサントロペに流れる時間と空気をまとうような服を日本の女性たちに提供したいと考えたのです。
カルチャーの発信といえば、70年代にはファッションやアート写真で有名なフォトグラファー、リチャード・アヴェドンを起用し、有名モデルを撮影したイメージCMを放映されました。

ROPÉ CM / TAD WAKAMATSU (1970)

佐々木
 ロペが標榜するクラシカルエレガンスな世界観を、それまで誰もやったことのない形で見せたいという考えがあったのだと思います。あのCMは、アメリカの人気ディスコ番組「ソウル・トレイン」が日本で放映された際に流れたのですが、黒人のダンサーが着て踊っていた「JUN」のTシャツが大流行して。番組、CMともに時代のトレンドやカルチャーをまさに作り出していたと言えますね。
 拝見したのですが、とてもアーティスティックでファッショナブル。当時は情報自体が少なく、今のように誰もが発信できる時代ではなかった分、作る側、発信する側のエネルギーと強いメッセージが伝わってきました。
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ブランド誕生以来、根底にある「コンサバ」

時代やトレンドが変化する中、50年間変わらないものとは?
佐々木
 たとえば、まだブランドがスタートしてすぐの70年代に「ギャミヌリィシャツ」というシャツを開発しました。メンズの要素をレディスに転換するという当時のファッションの潮流をロペなりに解釈した、男性仕立てのタイトなシルエットのシャツ。ジャージー素材を使う新しさと着心地の良さも受け、大ヒットしました。クラシックでスタンダードなものをどう着るか――。この考え方は、今もロペのベースにあります。
 80年代、90年代は、ブルジョアなスタイルや品の良さといったものが社会的にも女性の好みとしても強くなっていました。そんな風潮を受け、この時代のロペはかなりコンサバティブでしたが、「ロペらしいコンサバ」を追求し表現していきました。時代の風潮やトレンドをどうロペ的に咀嚼し、取り入れていくか。その向き合い方は50年間変わらず根底に流れています。
 最近はコンサバティブなブランドでもミリタリー風のブルゾンやコートを提案しています。メンズ要素をレディスに落とし込むとか、コンサバティブでありながらもブランドなりの解釈がちゃんと表現されているとか、そういったことをロペが発信し続けてきた影響はとても大きいのではないでしょうか。
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(左)ロペ 1986-87年秋冬コレクション (右)ロペ 1989年春夏コレクション

90年代に登場「アダム エ ロペ」「ロペピクニック」

90年代には、ロペの姉妹ブランドも生まれました。
佐々木
 時代とともに人々の嗜好性は変わります。そこに対してロペの違う側面を作っていかねば、という思いがありました。90年代に入ると、たとえば音楽シーンでは、色々なアーティストの曲を独自のセンスでリミックスするDJに注目が集まりました。同じ潮流がファッションにも生まれ、ワンブランドでの表現から様々なテイストやアイテムを組み合わせるおもしろさが人の心をつかむようになった。そうした時代の流れを捉え、ロペ的な感覚でトライしていこうと、メンズとレディス両方のアイテムをそろえるセレクトショップ「アダム エ ロペ」が誕生しました。
 ファッションがさらに自由になる中で、98年に「ロペピクニック」が生まれました。かわいくありながら、ロペの血統を継いだ「きちんと感」があるアイテムをそろえ、幅広い女性に楽しんでもらえる価格帯もこのブランドの特徴です。
 伝統を守りながら時代の流れを捉え、新しいことに挑戦し続ける。言葉にするのは簡単ですが、それを50年間続けてこられたのはすごいことだと思います。
佐々木
 伝統を守ることは大事ですが、守りすぎてはダメ。守りながらも自己否定することを忘れてはいけません。ブランドが良かった時代の成功体験に浸ってしまうと、時代とともに先細りになっていく。いい意味でどんどん生まれ変わり、新しい考えを入れていく。最終的なメッセージは同じでも、表現方法を変えていく。そうしたことに向き合ってきたからこその50年だったと思います。
 根底にあるものにどう「今」を映し出し、「今のバージョン」に変えられるか。それができるブランドは常に新鮮で、そのブランドを支持する人たちを飽きさせることなく引っ張っていけるんだと思います。

辻直子が引き出す、ロペ3ブランドの“女っぷり”

ロペ誕生50周年を機に発足したプロジェクトについてお聞かせください。
佐々木
 ロペ、アダム エ ロペ、ロペピクニックの3ブランドを「ロペシスターズ」として一緒に展開します。というのも、それぞれのブランドにそれぞれのファンがいて、3つのブランドの関連性があまり認識されていないと感じたためです。今は、テイストや価格帯だけでなく、TPOでファッションを選ぶ時代。3つのブランドが「ロペの血筋」であることをこの機会にしっかり訴求し、それぞれのブランドを使い分けていただくきっかけになればと思っています。
ディレクションを辻さんに依頼した理由は?
佐々木
 「女っぷり」ですね。女っぷりと一口に言っても、上品な女っぷりもあれば悪い女っぷりもある。いろんな女っぷりを表現することに関して、辻さんはもっとも能力があるスタイリストだと思います。3つのロペブランドそれぞれの女っぷりをうまく引き出していただきたい、と。
 そして、辻さんはいい意味でリアルな感覚を持っている。作り手的な発想だけでなく、ターゲットのお客さまたちが身につけたときにどう作用するのかといったところから発想する。気づかされること、刺激は多いです。
 スタイリストとしてロペの洋服はたくさん触れてきたのでとても光栄です。そして、今回はデザインから服作りに携わることができて、貴重な挑戦の機会をいただいたと思っています。
 私たちメディアの側がファストファッションや着まわしの特集をやり過ぎてしまったために、モノの本当の価値が見えづらい時代にしまったのでは、と考えることがあって。高いからいい、安いからダメではなく、洋服には価格だけではない価値があります。「私はこういう洋服がほしい」という自分にとって価値があるものを選ぶ目を、買う側の皆さんにもう一度持ってもらいたい――。そんな思いを抱いていたときに、今回のお話をいただきました。
 プロジェクトは3ブランドともに展開し、「ロペの血筋」を表現しながら、とは言え、それぞれのブランドが持つ背景、コンセプト、個性、そして女性像を大事にしたいと思っています。私がずっとロペに感じているのは「なんかステキ」。洋服を着ることで気分を引き上げてくれる、そんなブランドだと思います。ロペシスターズそれぞれの「なんかステキ」を表現し、たくさんの女性が輝く提案をしていきたいですね。
佐々木
 今はファッションがより手軽になって、安くてもそこそこのものがどこでも手に入ります。それは時代が求めていることなので否定はしません。とはいえ、人間はいいものに触れることで気持ちが豊かになったり、意識が高まったりする。それが、辻さんがおっしゃる「なんかステキ」なのかもしれません。ファッションブランドとして、そうしたお手伝いができたらと思っています。
これからのロペが女性に発信していきたいことは?
佐々木
 「外見よりも中身」と言われるように、人の関心がどんどん内側に向かっています。そういう時代だからこそ、中身の美しさを表現する洋服を追求していきたい。また、ロペは服作りに関しては伝統的な考えを持ちながら、新しいトライアルをしていくことがアイデンティティとしてあります。昔からあるいいものを伝えながら、一方で新しい技術で生まれた繊維などにも挑戦していく考えです。
 これまでの50年間も、これからも。いつの時代もロペは輝く女性とともに歩んでいきます。

PROFILE

佐々木 進株式会社ジュン 代表取締役社長

佐々木 進

1958年創業のアパレル&ライフクリエイションカンパニー 株式会社ジュン 代表取締役社長。89年ジュン入社。98年常務就任、2000年より現職。アパレルだけでなく、ゴルフ場、ワイナリー、レストラン、音楽番組制作、ビルボードと多角的に幅広く事業を手掛ける。現在日本全国に400店舗強を展開し、伝統を継承しながら常に革新的なビジネスを前進させている。

辻 直子スタイリスト

辻 直子

雑誌『BAILA』『Marisol』『otona MUSE』など数多くの女性誌で活躍し、女優やタレントのスタイリングも手掛ける人気スタイリスト。CMや広告でのスタイリングやブランドのディレクション、コラボレーションなども行う。フェミニンで品良く、女らしいコーディネートは多くの女性から高い支持を得ている。