作り手を触発 再評価される布仕事

  • 2014年6月9日

写真:アミューズミュージアムのボロの展示室=東京・浅草 アミューズミュージアムのボロの展示室=東京・浅草

写真:南部菱刺しの前掛け。模様は色毛糸で刺繡している=東京・浅草 南部菱刺しの前掛け。模様は色毛糸で刺繡している=東京・浅草

写真:『糸と針BOOK』(文化出版局) 『糸と針BOOK』(文化出版局)

写真:ルイ・ヴィトン 2013年春夏コレクション(大原広和氏撮影) ルイ・ヴィトン 2013年春夏コレクション(大原広和氏撮影)

写真:まとふのコレクション「ふきよせ」。過去の作品の布を使ったジャケット=大原広和氏撮影 まとふのコレクション「ふきよせ」。過去の作品の布を使ったジャケット=大原広和氏撮影

 刺繍(ししゅう)や刺し子、布接(は)ぎ、裂き織り……。おしゃれや防寒のため、あるいは厄よけや貴重な布を大事に使い続けるため、代々家庭に伝わってきた布仕事。その魅力を伝える展覧会が開かれたり、本が出版されたりしている。国内外のデザイナーの創作にも影響を与えている。

ボロは「ファッションの原点」

 開館5周年を迎える東京・浅草の「アミューズミュージアム」は、日本の古布を展示している珍しい美術館だ。芸能事務所のアミューズが運営する。

 青森県で半世紀近く古布を集めてきた故田中忠三郎氏の約3千点に及ぶコレクションのうち、1千点を入れ替えて展示している。長持ちさせるために布を継ぎはぎし、代々受け継がれてきたボロなどをモダンな空間に飾り、実際に手に取ることもできる。

 過去に舞台製作を手がけてきた辰巳清館長は、倉庫で見た所蔵品のエネルギーに圧倒されたという。端布(はぎれ)を左右対称に配するなど、ボロでもデザインに工夫が見てとれた。「貧しくとも少しでも美しく装いたい。ファッションの原点を見た」と振り返る。

 特別展では「南部菱(ひし)刺し」の前掛け37点を9月28日まで展示する。すべて重要有形民俗文化財。大正時代に入ってきたわずかな色毛糸を麻布に刺した作品だ。「当時の女性のおしゃれ心がつまったリアルクローズ(日常の服)。ポップカルチャーと同じです」

 服飾を学ぶ学生や外国人の来館者が増えているという。今年は、青森県の十和田市現代美術館で、所蔵品をアートとして再評価する展覧会も開かれる予定だ。

 一方、今春出版された「糸と針BOOK」(文化出版局)は、日本やアジアに古くから伝わる刺繍やつぎはぎなどの針仕事を、写真やエッセーと共に紹介している。

 防寒のために目の粗い麻布を糸で刺して塞ぐ青森の「こぎん」。子どもの成長を願い端布100枚をはいで縫った「百徳きもの」。母が娘に針仕事を伝えるための嫁入り道具「花ふきん」など。多くは、無名の母親たちが伝えてきた手縫いの技だ。最後は端布を継ぎ足した夜具やボロといった、布の往生で終わる。

 4年前に休刊した季刊誌「銀花」で針仕事を特集した7冊の記事を再編集して書籍化した。「無名の人による無作為の物であるのに、美を感じる」と青戸美代子元編集長。

 伝承の担い手の中には、故人も多い。自らを伝統を手放していった世代と自省する青戸元編集長は「身近にある物の原点を知ってほしい」と語る。

古布を研究、端布で新表現

 2013年の春夏パリ・メンズコレクションでルイ・ヴィトンが、翌年の春夏ニューヨーク・コレクションではアルチュザラが、日本のボロをモチーフにした。国内のブランドも、まとふがボロなど古布を発想の原点とした今秋冬の作品「ふきよせ」を発表している。

 「ブランドの立ち上げ時から興味があった」とデザイナーの堀畑裕之と関口真希子はいう。しかし、ただのパッチワークではない提案をするのが難しかったという。

 色も形も異なる布が集まって生まれる意図しない美が、和菓子の「吹き寄せ」と重なり、テーマとなった。美を感じる古布を研究し、過去の作品の端布を継ぎはぎした服だけでなく、再度使うことが少ない過去のプリント柄を重ねるなど、新しい表現も見せた。

 古布の持つ美とともに、作り手としての心をとらえたのは、込められた先人の価値観だった。布1枚がいかに貴重でいとしい物だったのかを、改めて気づかせてくれたという。「使い捨て社会の今、かつての布を慈しむ心をデザインに込め、伝えていきたい」(帯金真弓)

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