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顔が見える産地へ 山梨の機屋11社が連携

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  • 2014年9月22日
  • 写真:今年5月に渋谷ヒカリエに出店した「ヤマナシハタオリトラベル」=東京都渋谷区

    今年5月に渋谷ヒカリエに出店した「ヤマナシハタオリトラベル」=東京都渋谷区

  • 写真:光織物の「おまもりぽっけ」と朱印帳

    光織物の「おまもりぽっけ」と朱印帳

  • 写真:宮下織物の慶事用ふくさ。ビジューがポイント

    宮下織物の慶事用ふくさ。ビジューがポイント

  • 写真:槙田商店と学生コラボの日傘。開くと織りが花模様のよう

    槙田商店と学生コラボの日傘。開くと織りが花模様のよう

  • 写真:「ネブアアランドゥ」のリボニッシュネクタイ=ネバアランド提供

    「ネブアアランドゥ」のリボニッシュネクタイ=ネバアランド提供

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 グローバル化による空洞化で苦境に立つ国内の繊維産業。長らく大手アパレルなどの受注生産(OEM)に頼ってきた山梨県・郡内(ぐんない)地域の繊維業者の有志らが、自ら製品や情報を発信し、顔が見える産地への転換に取り組んでいる。若手の人材確保など活性化にも効果が出てきている。

「名前、取り戻したい」

 山梨県の富士吉田市や西桂町など郡内地域は、かつて細い高密度の織物「甲斐絹(かいき)」の産地だった。今も機屋(はたや)を営む11社で立ち上げたのが、「ヤマナシハタオリトラベル」。自社製品を合同で直販するグループだ。2年間で三越、伊勢丹、松屋、阪神など、東京や大阪の主要百貨店や商業施設に12回出店している。

 商品はどれもユニーク。お守りを巨大化してポーチにした「おまもりぽっけ」は、富士山や古来からの縁起物の柄を、ストライプや水玉で現代風にアレンジ。銀糸や鮮やかな色で大胆にあしらった。作っているのは、掛け軸の表装地や金襴緞子(きんらんどんす)を製造する光織物。華やかなドレスのサテン地にビジューをあしらった慶事用ふくさは、ウエディングドレスや舞台衣装専門の機屋、宮下織物の商品だ。

 お寺で使う座布団生地を使ったパソコンケース、富士山柄で髪飾りにもなる蝶(ちょう)ネクタイなど、各機屋の特性を生かした雑貨を扱う。

 「『トラベル』には自分たちが外に出ることと、産地に来て欲しいとの意味を込めた」と代表で「テンジン」の小林新司専務(49)。メンバーは20~50代で、30代が中心。機屋の2、3代目が多い。売り場には糸巻き機など工場の道具を飾り、自ら接客する。

 小林さんは、15年前にネクタイ地のOEM生産からリネンの自社ブランドに転換した先駆者。「受注に頼っていては活路がないと思い切った」と振り返る。直販を模索して都内の商業施設のイベント出店が決まった際、県富士工業技術センター繊維部の五十嵐哲也主任研究員に相談。他社と結びついた。

 五十嵐さんによると、郡内産地は家族経営の小さな機屋が多く、大部分がOEMに頼っている。製品は、裏地から傘地、座布団地、ネクタイ地、カーテン地などと分散。生産量は一昨年が約1200万平方メートルと、最盛期の2割弱に落ち込んでいる。「OEMから脱却し、名前を取り戻すのが課題」と指摘する。

 センターも援護する。3年前からデザイナーや流通関係者を対象に産地ツアーを企画し、メンバーらの工場見学や交流会を実施。ブログ「シケンジョテキ」を立ち上げ、催しなど産地の情報発信をしている。

大学コラボ、若返りも

 魅力ある商品開発の一助が、5年前に始まった東京造形大学との「富士山(ふじやま)テキスタイルプロジェクト」。同大の鈴木マサル准教授の学生が、1年かけ機屋と商品を作る。声を上げた光織物の加々美琢也さん(33)は、「挑戦のため外部の刺激が欲しかった」という。

 同社の「おまもりぽっけ」は、実習生だった井上綾さんが金襴緞子を生かす商品として発案した。半信半疑で売り出したが、3年で4千個を製造。卒業後もデザインを委託し、1年前に作った朱印帳は5千冊のヒット商品になっている。

 産地の若返りも期待される。宮下織物で慶事用ふくさを企画した渡辺絵美さん(28)は、東京造形大との連携1期生で、実習先に就職した。「企画した生地を自らの手で携わり、最初から最後まで見届けられる所に魅力を感じた」という。

 傘地の槙田商店に今年入社した井上美里さん(24)は去年の実習生。伸縮性のある糸を使った織りで立体的な柄になる日傘を提案した。傘に不向きな布だが、プロジェクトでは「ノーと言わない」のがルール。試行錯誤で完成させ、今は商品化を模索している。

 生産者の意識も変わった。ネクタイ地製造の渡小織物は、制服をモチーフにした新人ブランド「ネブアアランドゥ」のため、女性が使える商品の開発を引き受けた。細くて短く、結ばなくてもバレッタで留められる、新しい概念のネクタイだ。通常、少量での新商品開発はリスクになる。だが、3代目の渡辺太郎さん(35)から積極的に新発想に取り組んだ。「学生との経験で柔軟になった。前に出る機屋と産地でいたい」(帯金真弓)

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