ファッションニュース

詩的に紡ぐデザイン ミナペルホネン20周年

  • 2015年6月2日

「ポトフ」の生地を使用したコート(15年秋冬)=木寺紀雄氏撮影

写真:詩的でユーモラスな雑貨=山本和生撮影 詩的でユーモラスな雑貨=山本和生撮影

写真:デンマークのアルネ・ヤコブセンのエッグチェアには、女性向けコート地を提供した=山本和生撮影 デンマークのアルネ・ヤコブセンのエッグチェアには、女性向けコート地を提供した=山本和生撮影

写真:皆川明 皆川明

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 子供の落書きのようなチョウや不ぞろいの水玉、とぼけた表情のイヌ……。軽やかで詩的な柄で知られるミナペルホネンがブランド設立20周年を迎え、20日から都内で記念の作品展を開いている。国内の小さな繊維メーカーと二人三脚で作り上げてきた生地のベースとなる図案数は約600に及び、デザイン対象は服だけでなく家具や食器など生活全般にわたる。そのもの作りは独特の哲学に支えられているようだ。

図案数600 衣食住に彩り

 ミナペルホネンの最新作のテーマは深い味わいの「コク」。コートになった「ポトフ(煮込み)」という名の起毛風の織物は、赤や黄色など煮込んだ肉や野菜の風情が感じられ、ほくほくとした匂いまで漂ってきそう。

 これまでも、日常の中で発見したり思いついたりしたユーモラスなデザインを数多く発表してきた。目をぎゅっとつぶった時に見える輪っかや、雪が降った日の電信柱の刺繍(ししゅう)柄。2000年発表のソーダ水の中で泡がはじけるような水玉は、円の織りの目の違いによって一つひとつの水玉の光沢が微妙に違う。

 デザイン画の鉛筆のかすれや色のにじみまで、素材メーカーと共に何度も試作を重ねて生地に再現する。デザイナーの皆川明(47)は「日常から生まれたものは日常の中に返っていく。着る人に浸透しやすく、共感できると思って」と話す。

 皆川が、東京・八王子の6畳と4畳半の自宅兼アトリエを拠点に3着の服を発表したのが、1995年。04年からパリに進出。パリ・コレクションにも参加し、舞踏を交えるなどユニークなショーを見せた。

 大量生産・消費型の一過性のデザインではなく、単独でも長く存在し続ける生地や柄作りに取り組んできた。99年からその図柄や生地を使った椅子などの家具を発表。四つ足の動物がふんばったような形が話題を呼んだ椅子もある。08年には器のコレクションを開始。海外の素材メーカーや家具メーカーから生地を採用されることも多い。自身の料理好きが高じたレシピ本や絵本も出版する。

 エコへの意識も高く、デビューの翌年から服作りで余った布を使ったミニバッグを発売。過去に製作した服や、色などを変えて復刻した生地を販売する店もある。

 3人で始めた会社は現在、社員90人にまで増え、直営9店に加えて国内外約130店に卸すまでになった。

 長く作品を見てきたスタイリストの原由美子はその魅力を「東洋でも西洋でもなく、単なる日本とも違う独特の作風で、テキスタイルに重きを置いたデザインを貫いている。衣食住の表現を無理なく自然に続けているのも今の時代に合っている」と分析している。

 展覧会「1∞ ミナカケル」は東京・南青山のスパイラルガーデンで、6月7日まで。入場無料。

■作る人も喜び感じる服作り 皆川明に聞く

 ――デビュー当初は、魚市場で魚をさばく早朝アルバイトもしていたとか。

 「資金を調達できて、午後の時間を服作りに当てられるから。いい方法をみつけたって感じでした。その次の阿佐谷のアトリエは居酒屋の上階。ビル清掃をする代わりに安い家賃で借りた。一見、不自由だけれど、基礎を作れたいい時間でした」

 ――自身でこれまで成し得たと思うことは?

 「90年代後半は、産業としてどうファッションを作り上げていくかが問われました。素材から製品、労働問題まで全てをきちんと運営する方法に興味を持ち、自分なりに組み立てられたと思えたことです。着る人も作る人も喜びを感じる服作り。生地では、継続して世に出していける商品が増え、創業当初の理念が現実になったと感じます」

 ――生地を提供することで世界の企業とつながっていくという手法が個性的ですね。

 「日本は世界のどこよりも作り手の希望に沿う、応用力の高い生地メーカーが多い。その環境を生かし、手探りで続けてきた結果です。やれることをやるのではなく、ここまではと思い描いたことを、必ずやり遂げようと思ってきました」

 ――デザイナー兼社長の立場から今後の課題は?

 「ブランドが長く続くために、どう後進にバトンタッチしていくかということ。それは同時にもう一度より強く自由に自分らしさを突き詰めることに励む時期でもある。会社経営は社員が自然に成長できるペースとして、今後も年率20%増以内にとどめたい。自分たちの未来や、ブランド価値にとって長期的に正しいと思うことを続けていきたいのです」

 (編集委員・高橋牧子)

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