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まとう人と時代映す服 パリでモード史の企画展

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  • 2016年8月19日

「コレクションの解剖学」展の展示=大原広和氏撮影

  • 「コレクションの解剖学」展の展示=大原広和氏撮影

  • ナポレオンのベストと妻ジョセフィーヌのドレス=大原広和氏撮影

  • クリスチャン・ラクロワが妻に贈ったドレス=大原広和氏撮影

  • 「ファッション・フォワード」展で展示された18世紀のパニエで横に広げたドレスなど=大原広和氏撮影

  • 1940年代から2016年までの展示。ニュールック(中央)など歴史的作品が並ぶ=大原広和氏撮影

  • コムデギャルソン 2015年春夏の作品(左)=大原広和氏撮影

生活との関係、捉え直す

 ファッションと着る人との密接な関係に焦点を絞った企画展が、欧州でこのところ相次いでいる。デザイナー個人の仕事に光を当てた展覧会が一段落して、着る側からファッションを考えようとする動きが強くなっていることが背景にあるようだ。パリの二つの展覧会を巡った。

ガリエラ美術館

 誰がどんな理由で何を着たのか。ガリエラ宮パリ市立モード美術館で開かれている「コレクションの解剖学」展は、18世紀から現代まで、著名人から市井の人までの生活と衣服の関連性を興味深く展示している。

 皇帝ナポレオン1世が苦境にあった1814~15年に着たというコットンピケのベストは、薄汚れた生成りの小さな服。小柄な英雄の光と影を想起させる。

 隣にはその妻ジョセフィーヌが1805年ごろに着たモスリンのエンパイアドレス。2度と同じ服は着なかったという彼女のドレスには、遠くインドで施した可憐(かれん)なスズランの刺繍(ししゅう)が咲く。

 王妃マリー・アントワネットが1785年ごろに着たシルクタフタの胴着。その豊かな胸と細い腰、宝石が刺繍されていたと見られる跡から、彼女の数奇な生涯が生々しく迫ってくる。

 クリスチャン・ラクロワが妻に贈った華やかなピンクのドレス(1991年)は、妻の美脚が見えるように前が短くなっている。

 女優のコーナーでは、カトリーヌ・ドヌーブやオードリー・ヘプバーンが1960年代に着たイヴ・サンローランやジバンシィ作の楚々(そそ)としたミニドレスも。

 「カリスマから無名の顧客まで」の一角には、容姿に自信がない顧客のためにシャネルらが作った顔映えのする白いドレスや、小柄でも美しく見えるバイアス裁ちのドレスが置かれる。

 一般人の服では、第1次大戦中の看護師の白衣が印象的だ。白衣の胸のひだに、戦時でさえささやかな美を求める女性たちの気持ちが込められている。

 企画したオリビエ・サイヤール館長は「服の50%はアトリエで作り、後の半分は着る人が仕上げるという三宅一生さんの考え方と同じ。服とは、着る人の生き方そのものを映し、その足跡をも残すものだと伝えたかった」と意図を語った。

 会期は10月26日まで。

パリ装飾美術館

 パリ装飾美術館で14日まで開かれた「ファッション・フォワード」展は、1715年から現在まで、300年の服飾の変遷をたどった。同館所蔵の15万点の中から約300体の服を時代ごとに展示。ファッションは流行を繰り返しながらも常に前に進んでいく。そんなメッセージが込められた意欲的な企画だった。

 18世紀のルイ15世や16世の時代、宮廷で着る服は本物の金や銀糸製のため、重さで値段が決まった。横に大きく広がるアンダースカートのパニエは、狭いドアを出入りする時のためにボタンで取り外しできるようになっている。

 圧巻は吹き抜けの会場に立つ、1940年代から現代までの服100体。ディオールのニュールックやカルダンの未来派。服を自由に選べるようになった70年代からはユニセックススタイルや山本耀司ら日本勢、ベルギーや英国勢の個性的な作品が並ぶ。

 展示の最後は、この展覧会のポスターにもなった日本のコムデギャルソンの2015年の赤いパニエ風ドレス。最初の18世紀の展示と対をなす仕掛けだ。パメラ・ゴルバン学芸員は「モードは時代の証言者であり、くるくる回るもの。困難な時代に、次に向かうために、もう一度過去を俯瞰(ふかん)する必要がある」と話した。

 (編集委員・高橋牧子)

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