ニッポン人名鑑

<20>料理の力を口伝するラッパー DJみそしるとMCごはん

  • 2015年8月17日

  

DJみそしるとMCごはん
ミュージシャン
1989年10月25日生まれ

    ◇

 ピーマンの肉詰めやマカロニグラタンといった家庭料理の作り方を、ゆるふわな脱力系ラップに乗せてユーモア交じりに、それでいて真剣に歌う。2人組のような名前なのにソロだったりと、奇をてらっているように見えて、中身は至極まじめなプロジェクト。というのも実はこの活動、彼女の女子栄養大学時代の卒業研究が基になっているのだ。

「栄養大学に進んだのは、子どものころから絵や音楽などモノづくりが好きで、将来はその延長で、食べ物に関わるモノづくりがしたいと思ったから。料理って音楽と似てるんですよね。食材を切るのも人によってテンポが違って楽器を演奏しているみたいだし、そこに隣でお肉が焼ける音、スープが煮える音が合わさったりして」

 大学で選んだのは調理のほかメディア制作など、料理を多方面から学べる学科。学生たちの卒業研究がユニークなのも特徴で、彼女が思いついた案が「料理の楽しさを音楽で伝える」研究だった。

「料理番組や本とは違った形のレシピの伝え方があるんじゃないか、という発想から始まりました。調理の工程には分量や手順以外にも食材の感触など、レシピ本では伝えきれないものがある。子どもが台所でお母さんから料理を教わるように、または井戸端会議で奥さん同士がレシピを交換するように、その楽しさを口で伝えていきたいなと」

 教授やゼミ仲間の意見も参考にしながらし、架空のラップユニット「DJみそしるとMCごはん」として詞、曲、アートワーク、ミュージックビデオを自ら制作していった。発表は大成功、うわさがうわさを呼び、研究内容がCDリリースという形で世に出ることになったのが2013年。

「『久しぶりにピーマンの肉詰めを作りたくなった』『食のマンガを読んでいるみたいで楽しい』など感想をいただくたび、料理ってすごいな、みんなのものだな、と感じます」

 最近は服作りや金属溶接など料理以外の工程をラップにしてほしいと依頼されることも。ライブでは料理しながらラップする、来場者にも調理してもらうといった新しい試みが続々。それもまた人気のゆえん、可能性は無限、である。

(文・志村香織、撮影・松岡一哲)

「AERA」2014年3月31日号より

    ◇    

今のニッポン、これからのニッポンを支えるキーパーソンを紹介する『21世紀をつくるニッポン人名鑑』から転載します。

(次回は8月24日に配信予定です)

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