ニッポン人名鑑

<61>境界なき社会のプランナー 澤田智洋

  • 2016年6月6日

  

澤田智洋(さわだ ともひろ)
世界ゆるスポーツ協会代表
1981年7月14日生まれ

   ◇

 手にハンドソープを塗り、あえてボールをキャッチしにくい状態で対戦する「ハンドソープボール」。専用のイモムシ型のウェアで床をはいながら行う「イモムシラグビー」。いずれも近ごろメディアで話題の「ゆるスポーツ」の一例だ。奇想天外でコミカルなアイデアの数々は、年齢や性別、運動神経の差や障がいの有無にかかわらず、誰もが同じように楽しめることを目指して生まれたもの。考案者である彼は、実は電通のコピーライター/プロデューサーとしても活躍する人物。2015年4月に「世界ゆるスポーツ協会」を設立後、わずか1年足らずで「ゆるスポ」の存在を世間に拡散せしめたのも、広告の現場で培った手腕の賜物である。

「印象を残すには一瞬でインパクトを与えることが大事なので、まず見た目がフォトジェニックであること。また名前は短くて新鮮味があること、具体的な遊具を作ることなど、流通しやすくするためのあらゆる手法を用いています」

 普段の仕事にも「ゆるスポ」にも共通するモチベーションは、見えない境界線をなくすこと。

「17歳まで海外に住んでいたのですが、欧米ではアジア人はどうしたってマイノリティで、たとえ数学が得意であろうと、語学や歴史の知識、ひいては恋愛でもネイティブには太刀打ちできない。それがつまらなくて、もっとみんなボーダーレスに楽しく生きられないものかと」

 現在は「ゆるスポ」の普及のほか、日本ブラインドサッカー協会のコミュニケーションプランナーや義足女性のファッションショー「切断ヴィーナスショー」のプロデューサーなども務める。福祉との出合いは、生まれてきた息子に視覚障がいがあったことから。

「障がい者への理解が深まれば、息子も生きやすくなるはず。つまり、僕の活動ってすべて自分に価値が返ってくることが前提の、自己救済なんです。でも、ひとりの血の通った生活者である自分を起点に考えることは、間違っていないと思っています。“消費者”なんてあいまいな言葉で考えだすと、思考がズレていきますから」

 仲間はずれを作らず、みんなで取り組みたい。だから「ゆるスポ」も勝手に成長していってくれるのが理想だと考える。今年発刊の書籍「ゆるスポーツ図鑑」は、一般公募した「ゆるスポ」案を含む“参加型”となる予定だ。

「AERA」2016年2月8日号より

    ◇

今のニッポン、これからのニッポンを支えるキーパーソンを紹介する『21世紀をつくるニッポン人名鑑』から転載しました。

[PR]

&wの最新情報をチェック


&wの最新情報をチェック

Shopping