ニッポン人名鑑

<62>創意工夫の防災ディレクター 大木聖子

  • 2016年6月13日

  

大木聖子(おおき さとこ)
地震学者
1978年11月2日生まれ

   ◇

 地震学を志したのは高校1年のとき。阪神・淡路大震災がきっかけだった。

「同じ悲劇を繰り返したくないと思いました。医学や建築ではなく地震学を選んだのは、地球の生態に興味があったから。動物を愛するように地球という生き物が好きで、その生態を知ったうえで共存していきたいと思ったんです」

 北海道大学を卒業後、東京大学大学院理学系研究科に進み、博士論文を執筆中に、今度は新潟県中越地震が発生。その衝撃から、地震のメカニズムの研究にとどまらず、知識や情報を社会に伝える「アウトリーチ分野」のエキスパートに。防災教育にも力を入れ、学校や地域の防災イベントで講演やワークショップを実施。東日本大震災の際には、以前に防災教育を実施した東北地方の学校の生徒たちが全員無事に身を守れたという成果も出たが、一方で多くの命が失われたことに地震学者として責任を感じた。

「地震の揺れが1分続いたら津波が来る可能性が高い。あのとき最初に津波が襲ったのは地震発生の30分後。私たちが揺れの長さと津波の高さの関係についてもっと強く社会に伝えていれば、津波が来る前に避難できたかもしれない」

 その反省を胸に、2013年からは慶應義塾大学環境情報学部の准教授も務め、「楽しい防災」を切り口に研究室の学生たちと子ども向けの防災ダンス「じしんだんごむし体操」や防災ゲーム、中学生以上を対象にしたジレンマ教材(災害対応力を伸ばすための教材)などを生み出している。また昨年一児の母となってからは、自らの育児体験から防災のヒントが浮かぶことも。

「地域の保健課が生後間もない赤ちゃんを訪問するシステムがあるのですが、そのときに防災課が防災対策のチラシを作って保健課に托したらいいんじゃないかと。なぜなら、産後のお母さんってリスク認知が高いので、そのタイミングで情報をインプットして、サポートすれば効果が上がりやすいはずです」

 防災の基本は、自分の身は自分で守ること。誰かがすべてを守るのではなく、1人が1個ずつ守れば、結果的に全部が守られる。

「家具を固定する行為が重要なのは、子どもに『家具は留めるのが当たり前』ということを伝えられるから。自分の行動が次世代以降の命を救うということも、もっと発信していきたい」

「AERA」2016年3月21日号より

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今のニッポン、これからのニッポンを支えるキーパーソンを紹介する『21世紀をつくるニッポン人名鑑』から転載しました。

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