島めぐり

小豆島<1> 34歳、無職、バツイチからの再出発

  • 文・写真 宇佐美里圭
  • 2014年2月10日

 高松港からフェリーで1時間。瀬戸内海に浮かぶ小豆島は、人口約3万人。瀬戸内海では淡路島に次いで2番目に大きい。古くから醤油やそうめん、ごま油、オリーブなどの産地、さらには映画「二十四の瞳」の舞台としても有名だ。近年は3年に1度のアートイベント「瀬戸内国際芸術祭」が開催される島の一つとしても知られている。

 この島のほぼ真ん中に「中山」という集落がある。700枚もの棚田が波のように重なり合い、「千枚田」と呼ばれる美しい風景が広がっている。その棚田の中心に“こまめ食堂”はある。

 昭和初期に精米所として建てられた古民家は当時の面影を残しながらも、どこか今風でおしゃれ。ガラガラガラと引き戸を開けて中に入ると、地元のおじいちゃんたちがおしゃべりをしていたり、家族連れの観光客がコーヒーを飲んでいたり。誰でも受け入れてくれそうな、ほっとするあたたかさが漂っている。

 「オリーブ牛ハンバーガーセット」や自家製マフィン、スペシャリティコーヒーなど多彩なメニューのなか、一番人気は「棚田のおにぎり定食」(千円)。中山の棚田で取れた米と、銘水百選にも選ばれている地元の「湯舟の銘水」を使い、ガス釜で炊き上げる。地元の野菜や魚のおかずがついた定食はまさに土地の味がする。

 「うちのコンセプトは、“島にあるものを使って、これまでにないものを作る”こと。もともとこの島にあるものに光を当てたいんです」

 そう話すのは、食堂を運営するNPO法人「DREAM ISLAND」副理事の連河(れんかわ)健仁さん(41)。熊本県生まれの札幌育ちで、8年前に小豆島へ移住した。

 もともと、フリーランスとして、建築設計やアートスクール講師、アニメーション制作、広告デザインなどを手がけていた。27歳での結婚を機に、「綱渡りの生活もできない」と、広告製作にかかわった携帯電話販売会社に就職。販売にとどまらずソフト開発や流通も担当し、管理職までこなし、東京と札幌を行き来する生活をつづけた。

 「3人で始めた会社が3年で『道内売り上げナンバー1』になり、一気に50店舗へ拡大したんです。2004年にライブドアに買収されたんですが、その頃からIT業界に嫌気がさしてきて……。“ビジネス的成功”を目指すと、やっぱり人間は体調が悪くなるんですよ(笑)」

 次にやることを決めていたわけではなかったが、06年に退職した。

 日本の人口は2006年がピーク。100年後には6000万人、200年後には4000万人にまで減る。確実に人口減少が続いていく時代に、右肩上がりの経済成長なんてあるわけない。

「もう、数字を追っかけるだけの仕事はやーめたって思って。暮らすために仕事をするのは嫌だ。もっと人間らしい、縄文的な暮らしをしたい、とぼんやりと考えていました。すべてを捨てて、ゼロから始めたい。自分の体ひとつで何ができるか試してみたい、という思いが募っていった。

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