山崎亮 〈ハタラク〉をデザインする

子どもの寝顔ではなく、笑顔を見るには 駒崎弘樹(3)

  • 駒崎弘樹×山崎亮 (3)
  • 2013年8月29日
  

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 何のために働くのか。シアワセを生み出す働き方とは――。そんなテーマをもとに、コミュニティデザイナーの山崎亮さんがホスト役となってハタラク・エキスパートたちとの対話を重ねる、連続公開対談「〈ハタラク〉をデザインする」。7月30日に開催された第1回のゲストは、病児保育や待機児童問題など、社会的課題の解決に取り組む一方、新しい働き方を実践・提案している、認定NPO「フローレンス」代表理事の駒崎弘樹さん。いよいよ120分のトークライブの後半です。

山崎亮 僕の場合はライフとワークが渾然一体となって、24時間モチベーションの塊のような暮らし方をしています。一方、駒崎さんは、ライフとワークをきっちりと分けることによって、ライフによって得られたプラスの部分がもう一度働き方のところにフィードバックされる形をつくっていますよね。グローバルな競争力を生むのは、そんな働き方かもしれません。もしかしたら、駒崎さんのように、価値転換で新しい働き方をつくることによって、その働き方のモデル自体を海外に輸出する時代になっていくのかもしれません。
 ところで、会場から質問のあった、自治会のお話はまだしていませんでしたね。

 ◆「自治会をはじめとする、地域のコミュニティづくりを活性化するためには?」

駒崎弘樹 町内会や自治会は、昔ながらの大事な地域のつながりですが、コミュニティづくりのために、必ずしも「地縁型」のコミュニティを盛り上げなければならないというわけじゃないと思っています。地域の自治会って、若手が65歳みたいな世界じゃないですか。今は持ち家率が下がって、なかなか戸建てを持てなくなったりしているという事情から、特に都市部では既存の地域集団の力が有効ではなくなった時代です。
 それに対して、今は「テーマ型コミュニティ」というのがありますよね。こっちをどう元気づけるかというのも興味深いテーマだと思っています。

地域コミュニティへの入口は家庭にある

駒崎 たとえば、仲間たちと町のゴミ拾いをするとして、ゴミ拾いが終わったあとに、ついでに飲み会もしますかとか。飲み会が楽しいから、毎回、ゴミ拾いに参加しています、みたいな。そこでつながっているのは「ゴミ拾い」というテーマですね。昔は、自治会だからしょうがない、みたいな形だったかもしれないけれど、同じゴミ拾いを目的としても、テーマ型のほうがモチベーションは高まるかもしれませんね。FaceBook、Twitter、mixiなんでもいいから気軽に呼びかけて、あるテーマに共鳴した人だけが集まる。ただ、毎日会社に夜の9時までロックインされていたら、コミュニティに参加する機会は失われるので、働き方を変えていくというのが根本のところで必要だと思います。

山崎 そうですね。

駒崎 もう一つ大事なのが、家族へのコミット。そこが入口になって、地域社会へのコミットへとつながっていくんですね。たとえば、家族で食卓を囲んでご飯を食べる時に、子どもの話を聞く。学校でいじめがあるのを知ったりする。それは何とかしなきゃいけないね、とPTAに参加する。すると、いろいろなパパ友、ママ友ができていく。そこから、学校や教育行政とのかかわり方を学んでいく。じゃあ、教育委員会に対してみんなで提言していこうという流れができたりする。そんなところから、行政や政治へのかかわりにつながっていく。
 家族へのコミットが地域社会へのコミットにつながっていく、というのがあると思いますね。ただ、日本の男性の場合は、多くは子どもの笑顔じゃなくて、寝顔しか見られません。そうなると、なかなか地域社会への参画というようなドアノブに手をかけられない。

山崎 コミュニティデザインにかかわる時も、「地縁型」というのは一番大事な、基本的なコミュニティになっていますが、最近は、駒崎さんがおっしゃったような「テーマ型」で集まる人たちも出てきて、こちらをどういうふうに元気づけていくかというのも大事な課題になってきています。さらには、この二つのコミュニティをどうネットワークさせていくか。「地縁型」と「テーマ型」を両方リンクすることができると、大きな地域の力になり得るんです。
 おおざっぱにいうと、地縁型は農村型、テーマ型は都市型ということもできますね。それぞれが違う文化圏になっちゃっていて、どっちにも、得意なところと不得意なところがある気がするんです。都市型のほうは、あるテーマで集まってはいるけれども、いざという時、自分の隣の家に誰が住んでいるかがわからない。でも、鉄道が好きだとすると、鉄道オタクの人たちとは全国的につながっているわけですね。じゃあ、震災があった時にはそのつながりをどういかせるかといえば、やはり農村型、地縁型のよさも取り入れていく必要がある。
 一方で、農村型だと、地縁、つまりしがらみがあまりに強すぎて、思ったことがなかなかできない。漁師の奥さんたちは、何か新しい事業をやりたいと思っているんだけど、婦人会の手前、でけへんわ、という風に。そういう時には、テーマ型のコミュニティーの手法で進めていくやり方もありますよ、と提案します。
 だから、この二つをうまくリンクさせて、農村・地縁型コミュニティの中に、「地域限定テーマ型」みたいなものを作っていくという方向性はあると思っています。地縁で集まっているんだけども、その中で、同じ趣味やテーマを持つ人が集まる団体を作って、これを本来の地縁型で集まる人々にちゃんと認めてもらいながら進めていくというやり方です。
 そういう設定が生まれると、若い人たちも活躍できるんですよ。地縁だと、どうしてもできあがった序列や人間関係に拘束されがちで、あそこの家とは江戸時代から喧嘩(けんか)してきた、というような動かぬ壁が出てきて終わっちゃう。でも、テーマだったら好きな人たちで集まれるでしょう、と。

「傍(はた)を楽にする」をシゴトに

山崎 こんな質問もありましたね。

 ◆「都市には職があるけれど、農村にはなかなか職がない。地方で職をつくるには?」

山崎 じつは農村にも、けっこう職はあるんですよ。たとえば、会場に島根の方がいましたね。東京と比べて、島根には仕事がないんじゃないかと。ここには仕事がない、と思い込んでいる。だから、島根に住んでいるお母さんたちは、大阪や東京に息子を出さなきゃいけない、と。でも、そんなことはないんです。島根にも、すごい仕事があふれているんですよ。
 働くって、「傍(はた)を楽にする」という意味もあるようなんですね。傍にいる人を楽にするということをしている人は、もう、いっぱいいるわけです、島根にだって。だったら、そこに対価が発生するようにしていけばいい。子どもたちのこと、高齢者や障害者のこと。少子高齢が進んだような「課題先進地」であればあるほど、じつは、傍を楽にする機会はたくさんある、ということだと思います。

駒崎 なるほど。

山崎 それに、インターネットも、品川より島根のほうが(接続速度は)速い。品川では、何千ギガの光ケーブル網を敷いていても、ものすごくたくさんの人が使っていますからね。携帯でYouTubeとかを見ようと思うと、遅いですよね。でも、島根県の海士町とか行ってみてください。夜8時以降、おばあちゃんたちは全員寝ていますから、光ケーブルを独占しまくりです。ものすごい速いです。
 だから、じつは、東京のほうがインターネットが速いとか、仕事がたくさんあると思い込んでいるのは、脳みそがまだ、昭和な感じが残っているということです。皆さんぜひ、中山間離島地域にお試しで行ってみてください。近々、北海道の沼田町では町中Wi−Fiが通って、しかも全部無料で、全域で利用できるっていうことになります。ぜんぶ光ケーブル。ものすごいことが起きちゃっているんです。それは、総務省が地域ICT事業というのをコツコツとやってきた成果だと思います。
 そんな時代だから、東京じゃないと仕事がないと思わないほうが、自分の人生の幅がそうとう広がるだろうな、と思います。

(第4回は9月5日に掲載予定です)

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