山崎亮 〈ハタラク〉をデザインする

マスに向けてはヒットは生まれない 古田秘馬(4)

  • 古田秘馬×山崎亮(4)
  • 2013年10月10日
  

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 何のために働くのか。シアワセを生み出す働き方とは――。そんなテーマのもと、コミュニティデザイナーの山崎亮さんがホスト役となってハタラク・エキスパートたちとの対話を重ねる、連続公開対談「〈ハタラク〉をデザインする」。第2回のゲスト、東京・六本木のビルに囲まれた農園付きのレストラン「農業実験レストラン 六本木農園」ほか、さまざまなプロジェクトを仕掛けてきた、プロジェクトデザイナーの古田秘馬さん。120分のトークライブもいよいよ終盤に。白熱するトークから、古田さんの仕事の哲学が伝わってくる。

誰にとって価値がある企画なのか

古田秘馬 企業の協賛を得ようとしたら、その企業は何に価値を置いているのかをちゃんと見る。CSRとはいっても、ただの社会貢献だけにお金を出さない。利益あっての企業ですから。その企業に何らかのかかわりがあり、何らかのリターンが返せなければ続かないと思います。
 最近だと、「CSR」から「CSV」へという流れがあります。Creating Shared Valueと言うんですけど、社会にとっての価値と企業にとっての価値を両立させて、企業の事業を通じて社会的な課題も解決しちゃおうと。僕らはそれを発展させて、「Community Shared Value」と言いますね。コミュニティだからこそ、ひとつのバリューが生まれると。

山崎亮 それは新しい。

古田 簡単に言うと、観光だったら、これまでは団体旅行だったんですよ。100人呼んで、その分コストを安くしてと。でも100人いると、1人ひとりの顔は見えないから、ざっくりとみんなが楽しめるようにというコンテンツにせざるを得ない。お土産屋に行かなきゃいけないし、とりあえず神社にも行く。美術館もまあ行く、っていう具合にね。そうすると、コストは安いんだけど、参加者の満足度は低いんですよ。
 それが、経済的にいい時は個人旅行になってくるわけですね。当然、個室の部屋で、団体割引がないからものすごく高い。まあ、お金払っただけはあって満足度は高いけど。それでも結果として、高価な分だけ頭数は集まらないから、地元への利益はそんなに変わらないんです。経済が傾き、個人じゃ無理だねという流れになった途端、地域の高級旅館は軒並み圧迫されてしまった。

山崎 もう、高コスト体質になっていたから。

古田 じゃあ、何だったら収益が上がるのか。そう考えると、やはり団体旅行モデルしかないということになる。団体だからこそコストが下げられる。でも、その中でどうやって満足度を上げるのかといった時に「コミュニティ」が重要になってくるんですね。

マスではなく、コミュニティ単位がヒットを生む

山崎 例えば、どんなコミュニティが考えられますか。

古田 丸の内朝大学に、和太鼓クラスがあるんですよ。例えば、佐渡島に行くとします。普通に100人を集めたら、みんな金山にも行って、あれもやってこれもやってとなる。だけど、そういうのはすっとばして、佐渡島で有名な「鼓童」というグループに和太鼓を学ぶ。「聖地の佐渡に行こう!」ということになると、和太鼓好きが集まるので、現地でやらなきゃいけないことって和太鼓だけでいいんですよ。
 でも、そういう人たちからしたら、鼓童との演奏はひとりじゃ体験できない。10人がみんなで行くからこそ実現できる。参加する皆さんも、何十人であれば、1人あたりのコストは安くできるよねと。それでいて、絶対にほかでは味わえないようなことが体験できる。しかも、和太鼓が好きなみんなで行くから、その体験をシェアできて。

山崎 もう、それは最高ですね。

古田 マスに向けて、何百万人にヒットするということはない。だけどコミュニティ単位で、あるバリューをシェアするというのがひとつの流れなんです。経済の仕組みとして、このコミュニティだからシェアできるよねということを企画できれば、ものすごく新しいヒットが生まれてくると思う。ビジネスチャンスです。

山崎 なるほど。


古田 長崎の対馬でツシマヤマネコという天然記念物を守るための棚田があって、「ツシマヤマネコ米」というのを作っている人たちがいたんです。僕らはこれを東京のマルシェで「オーガニック」と言って売ったけど、あまり反応はなかった。でも次の日、動物園でツシマヤマネコのオリの横で「この子たちを守るために作ったお米です」って言ったら、飛ぶように売れた。ネコ好きの人がみんな買っていく。バリューは、無農薬とか農法とか品質とかじゃない。この人たちにとっては「ネコを守る」ですね。人が買う行為ってまったく違うところにバリューってあるんだとわかるわけです。

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PROFILE

古田秘馬(ふるた・ひま)

慶応義塾大学中退。 株式会社umari代表。雑誌「ポカラ」のプロデューサーなどをへて、 2000年にニューヨークでコンサルティング会社を設立。02年から東京に拠点を移す。現在は、山梨県・八ヶ岳南麓の『日本一の朝プロジェクト』、東京・丸の内の『朝EXPO in Marunouchi』、六本木の『農業実験レストラン 六本木農園』、歌舞伎のブランディングなどを手がける。著書に『若き挑戦者たち』。HP


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