山崎亮 〈ハタラク〉をデザインする

目指すのは「憧れられる会社」 遠山正道(2)

  • 遠山正道×山崎亮(2)
  • 2013年10月31日
  

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 何のために働くのか。シアワセを生み出す働き方とは――。コミュニティデザイナーの山崎亮さんがホスト役となってハタラク・エキスパートたちとの対話を重ねる、連続公開対談「〈ハタラク〉をデザインする」。9月24日に開催された第3回のゲストは、スープ専門店「Soup Stock Tokyo」ほか、新しいコンセプトのリサイクルショップ「PASS THE BATON」などを展開する株式会社スマイルズ社長の遠山正道さん。120分のトークライブの模様を5回にわたって紹介する2回目は、遠山さんが描く会社像と「仕事をするうえで譲れないもの」についてお届けする。 

ビジネスと美意識とを共存させる

山崎亮 今、社員の方は何人ぐらいいらっしゃるんですか。

遠山正道 社員が200人ぐらいで、アルバイトが1400人ぐらいです。

山崎 それだけの規模があって、社長としては、仕事をそれぞれの部の人たちにほぼ任せているんですね。

遠山 任せるというのは、実務ですよね。実務じゃないところでの社長像という意味では、社長は社員を養う責任があって、社員には家族がいて……と考えて、社長は何千人分もの責任を背負っているんだ、という言い方をする人がいますよね。おっしゃるとおりですが、誤解を恐れずに言えば、私はそれは無理だと思ってるんですよ。
 社員1人ひとりに加えて、その家族のことまで含めて「中村君、調子はどう? お母さん元気?」とか気にかけるよりも、私は会社が進んでいく先の方へ体ごと向いて楽しそうにしながら歩んでいく。社員が追いかけてきて、「あ、遠山さん、またあっちの方までいっちゃってる」「ああ、それじゃあ、僕らももっと先までいってみなきゃ」みたいな感じに持って行ければいいなと。そういう羅針盤のような役割は他の社員にはできないじゃないですか。
 だから、格好良く言えば、「皆がやりたくなるような、やるべきこと」に常に向かっていって、常にウキウキしているというか。「ヤバい、遠山さん、またなんか思いついちゃったみたいだけど」って。

山崎 遠山さんが楽しそうな顔をしている感じが、社員にも伝染するような。

遠山 そういう「感じ」でいられるのが、やっぱり私の役割かなと思いますね。そうすることが、私自身も楽しいし、会社も楽しいし、世の中に対しても「スマイルズ、次はこうきたか」みたいに、球を投げられる。「ああ、ちょっと思いもよらないよね」みたいなミラクルな球を。
 でも、別にそんな突飛なことをやっているつもりはないんです。立ち上げた四つの事業はいずれも、新しさ、斬新さを評価されますが、基本的にまじめなんです。私自身が三菱商事にいたし、つい数年前まで三菱商事が株主でした。一時期は、監査役が4人もいましたし。

山崎 うわ、ものすごくまっとうですね。

遠山 私、「PASS THE BATON」を始める5年ぐらい前までは、Soup Stock Tokyo 一本足打法でした。まず、そういう生まれ育ちの会社だということが基礎にあるんです。

やりたいことをビジネスに着地させる

遠山 12月中旬ぐらいに「PASS THE BATON」の本を出すんですが、タイトルは『やりたいことをやるというビジネスモデル』というものにしようと思っているんですね。これ、かなりキュッと縮めているんですが、もうちょっと長く言うと、「やりたいことだけをやってビジネスになれば、こんなにありがたいことはないんだが、そんなうまくいくものは見たことがない」となる。考えてみれば、やりたいことがないとスタートしないし、やりたいことがあっち側にあって、こっち側にはビジネスみたいなものがあったとしたら、両方のバランスを取りながらも、ちゃんとやりたいことに忠実に、それをビジネスというフィールドで着地できるようにしようじゃないか、というのが僕のスタンスなんです。
 私のやりたいことというのは、新しいプロジェクトの最初の取っかかりのところにあるんですが、ちゃんと着地させるためには、経営陣にも中間層にも現場にも、ビジネスを普通にきっちりできる人たちがいないと成り立たない。
 だから、うちの会社は意外にみんなまじめなんです。みんなちゃんとやるべきことをやってくれているんで、経営会議では、「はい、はい」って言って。でも、そんな私でも、年に1度ぐらい怒るというか、いやな顔をすることがある。

山崎 それはどういう時なんですか?

遠山 きっと、あんまり難しい話じゃないですね。ちょうどいいので、先ほど、会場からいただいたご質問の内容に、ここで触れておこうかな。

◆質問 「仕事をする上で、譲れないものは何ですか」

遠山 私が日頃、口にしている言葉の一つを持ち出して言うならば、「美意識」っていう感じでしょうかね。私が「美意識」とか言うと、社員はみんなビビるわけですよ。「ああ、美意識ですか。すいません」みたいな。だから、社員の意識の持ち方も、自然とハードルが高くなっちゃう。「これをやったら遠山さん、いやがるだろうな」とか、自浄的に抑えが利いている。
 うちって、Soup Stock Tokyoの成り立ち一つでも、美意識とか、意義みたいなことをしっかり決めてあって、そういうことに結構うるさいんですよ。例えば、Soup Stock Tokyoでカレーを出そうという話が持ち上がった時に、何カ月も大議論になって。カレーは、果たしてスープの範疇になるかどうか、とかね。

山崎 確かにそうだ。

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PROFILE

遠山正道(とおやま・まさみち)

1962年、東京都生まれ。慶應義塾大卒。85年、三菱商事入社。97年、日本ケンタッキー・フライド・チキンへの出向を経て、2000年、三菱商事初の社内ベンチャー企業「スマイルズ」を設立。現在、「Soup Stock Tokyo」のほか、ネクタイの専門ブランド「giraffe」、新しいリサイクルショップ「PASS THE BATON」、ファッションブランド「my panda」を展開。近著に『成功することを決めた』(新潮社)。HP


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