山崎亮 〈ハタラク〉をデザインする

夢描く前に、地道に現場感覚を 遠山正道(5)

  • 遠山正道×山崎亮(5)
  • 2013年11月21日
  

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 何のために働くのか。シアワセを生み出す働き方とは――。コミュニティデザイナーの山崎亮さんがホスト役となってハタラク・エキスパートたちとの対話を重ねる、連続公開対談「〈ハタラク〉をデザインする」。9月24日に開催された第3回のゲストは、スープ専門店「Soup Stock Tokyo」ほか、新しいコンセプトのリサイクルショップ「PASS THE BATON」などを展開する株式会社スマイルズ社長の遠山正道さん。遠山さんのお話も、いよいよ最終回。会場から次々と飛ぶ質問に、笑顔で答えた。

小さなことでも、心が動く瞬間を逃さない

山崎亮 会場からは、こんな質問もいただきました。

 ◆質問 「最近、感動した出来事は何ですか?」

遠山正道 山崎さんは、最近感動したこと、あります?

山崎 いま、瀬戸内海にある広島県の離島に通っているんです。「しまのわ」というプロジェクトに関わっていて、離島に住んでいるキャラの濃いおっちゃんやおばちゃんたちに会いに行くツアーを作ろうと思ってるんです。
 ある島では高齢化が進んでいて、65歳以上が半分以上で、人口もどんどん減っていっている。観光にはあまり取り組んでこなかったところで、新しいツアーを始めれば外から人が入ってきますから、おっちゃん、おばちゃんたちに観光案内所みたいなことをやってもらおう、という案が浮かびました。ただ、みんなお年を召していますから、あまり労力を使えないんですよ。体力もないし、語りもプロじゃありませんしね。みんなが集まって、いろいろ、わいわいしゃべれる場所をひとまずつくって、そこでちょっとだけ観光案内もできたらと。ゆるーくね。
 おばちゃんたちが「ポットだけ置いてもらえば、自分たちでコーヒーとか作れるから、それぐらいだったらやるよ」と言ってくれたので、港の近くにあった家に「観光案内」という表示を出して、観光客も入れるようにしようと思っています。労力をかけられないから、「省力カフェ」という名前にしようと思っているんですが。
 そこでは、観光客に「釣りならあそこが釣れるよ」とか、「あそこの店がおいしいよ」とか教えてくれるだけでいいですからって伝えたら、おっちゃん、おばちゃんたちが、すげえ頑張り始めて、むくむくとやる気を出してきて。
 はじめは「何もやりたくないよー」という感じだったのに、自分たちのできる範囲で力を寄せ合わせればできるかもしれない、とスイッチが切り替わった。人を呼んで来たり、情報を集めたり。これには感動しているんです。

遠山 いい話ですね。私の場合は、この間、ある現代アートに出会って、それを購入したんです。そのアートに感動できた自分に感動したという、極めて個人的な話です。
 それは、赤いランプが横五つ、縦五つぐらい並んでいて、ピカピカ点滅していたんですね。ああ、いかにも現代アートという印象で、興味が湧かず素通りしたんですけど、作家が説明を始めまして。そうしたら、その1個1個のランプがダメダメなんだと。精度が悪い。なぜなら、100円均一で買ってきた、自転車の後ろにつけるランプで、ハンダゴテの具合がまちまちで、速く点滅するものがあれば、遅いものもある。彼は、そのまちまちなものが理論的にはある一瞬、同時に光るのではなかろうかと考え、それを見てみたいと思った、っていう話なんです。
 それを聞いて、私は、その1個1個が社員かなと思ったわけです。一見すると現代アート然としているのに、実はハンダゴテとかがイマイチで、まちまちの速さで光る。でも、それだからこそ揺らぎみたいな味が出る。そんなダメダメなのに、一生懸命、現代アートとして背筋を伸ばしている感じみたいなのがみてとれて、すごくいいなと思って。心が動いた瞬間でしたね。

山崎 なんとなくスマイルズのメタファになっている感じですね。

次に勝負できる仕事環境を整える

遠山 ビジネスのアイデアとか、組織の作り方、自分の生き方もでもいいんですが、どんなことでも、自分で思いつけたことって、すごく嬉しいじゃないですか。どこかから借りてきたものじゃなくて。小さなことでもいいから、そういうことに出会えた瞬間というのは、うれしい。
 何かプロジェクトを立ち上げる時に、銀行さんにプレゼンに行ったり、上司を説得したり、仲間を巻き込んだりするわけですが、その取っかかりのところが、自分の中から何かポコッと出てきた「見つかっちゃったもの」みたいなことがスタートだったりすると、すごくいいなと思うんですね。そのアート体験は、久々に、自分の中から「ポコッ」が見つかったという感じでした。

山崎 それはまさに現代アートの読み取り方ですよね。現代アートって、本当に見る側の態度が問われるものが多いですから。
 もう、時間も少なくなってきました。会場の皆さんの中で、もっとこんなことを聞きたかったとか、新たにご質問がある方は手を挙げて……あ、いらっしゃいますね。

 ◆質問 「三菱商事にいらした時に抱いていた社長像と、今と違うと思う点は」

遠山 会社に勤めて10年たって、方向転換しようと思った一つの理由は、商社みたいに大きな会社になると、社長になるのに時間がかかるわけですよね。最後、ようやく社長になれたとしても、数年ダーッと走ってバタッと倒れて終わっちゃうという。60歳すぎてからで楽しいんだっけな、と。

山崎 その時に社長になってもね。下手したら2年目ぐらいで、記者会見で謝らなきゃならないかもしれないですよね。

遠山 そうそう。私が43歳で社長になりたいと言ったのは、次に勝負できる環境を整えたいという意味だったんですね。まず、何かをチャレンジするのであれば、仕事は1人じゃできないから、仲間を集めなきゃいけない。共感しあえる仲間を集め、多少お金も蓄え、小高い丘に登って、そこから見渡して自分のやりたいことを探して、「あ、あそこだ」と言って直進して行く。
 だから、やりたいことをやるための準備として、社長という状況を環境設定したいなと思ったんですね。最後の最後にバトンを渡されてもきついだろうなという社長像と、勝負していくという社長像の違いでしょうかね。全然、違う。

山崎 三菱商事にいた時にイメージしていた、最後の最後にバトンを渡される社長というのと、若いうちから社長になるというのは、やっぱりずいぶん違うわけですね。

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PROFILE

遠山正道(とおやま・まさみち)

1962年、東京都生まれ。慶應義塾大卒。85年、三菱商事入社。97年、日本ケンタッキー・フライド・チキンへの出向を経て、2000年、三菱商事初の社内ベンチャー企業「スマイルズ」を設立。現在、「Soup Stock Tokyo」のほか、ネクタイの専門ブランド「giraffe」、新しいリサイクルショップ「PASS THE BATON」、ファッションブランド「my panda」を展開。近著に『成功することを決めた』(新潮社)。HP


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