【動画】予備校講師の林修さんから受験生へ
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(初出・2014年1月15日朝日新聞デジタル。内容は掲載時点のものです)

 先日、テレビ番組の収録で、東大時代の恩師にインタビューをしました。冒頭から「精神的貴族主義が……」と話されるような方。一般の視聴者には難しすぎてしまう。ですからさえぎらないように話を受け、視聴者にわかるようにかみ砕きながら、会話のキャッチボールをしました。その作業が、すごく楽しかった。

 難しい事象が、自分というフィルターを通って、誰にでもわかる言葉として出せた時は快感です。予備校講師の立場でも、テレビのコメンテーターとしても同じなんです。テレビに出始めた昨年の今ごろ、僕はよく「すぐ消えますよ」と言っていましたが、まだこうしているということは、その「翻訳能力」があったからかなと思います。

天井、決めなきゃよかった

 その素養の多くは、中学の時に積み重ねた読書にあります。僕はかなり甘やかされて育ったので、本には不自由しなかった。入り浸っていた本屋で、少しでも興味があったらすぐに買う。岩波文庫を山ほど読み、史記や荘子、韓非子を白文で読みました。

 「どうせ大学受験があるのだから」と、英語や数学も中学の内容にとどまらず、バンバン先に進めました。でも、受験勉強の枠内で止まっちゃったんですよね。いま思えば、そんな枠にとらわれず、もっと進めばよかった。水泳の岩崎恭子さんは、中3で金メダル。体操選手もそうですが、中学生だからここまでと天井を決めている優秀な選手はいない。そこは、僕が中高生時代で唯一後悔していることです。

 逆に言うと、ほかにやり残したことはありません。読書やラグビー部の練習、そして食べること(笑い)。ご飯は食べすぎて、100キロを超えたこともあります。進学校だったので、友達と数学の難問をわいわい研究するのも楽しかったですね。

「体調管理」も受験科目と思って

 本当に、好きなこと、興味のあることだけしかやらなかったけど、好きで没頭した読書や勉強が、僕の能力を生かした今の仕事につながったのだと思います。そういう意味では、昔から「いま(好きなことをやればいい)でしょ」なのかもしれません。

 僕自身が特に恵まれた環境にいたという自覚はありますが、一般的に言っても「受験できる」こと自体が恵まれているんです。勉強もままならない環境の子もいるし、経済的な事情で受験できない子も多い。勉強だけしていればほめてもらえる状況でやる気にならない人は、やらなくていい、とさえ思います。ただ、合否という、勝ち負けがはっきり出る受験に真剣に向き合う体験は、必ず人生の財産になりますよ。

 本番まであと少し。「体調管理」という科目がもう一つあると思って、万全の状態で挑んで下さい。(聞き手・小林恵士)

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 はやし・おさむ 名古屋市出身。東大法学部を卒業後、日本長期信用銀行(当時)に就職したが半年で退職し、予備校講師に転身。現在は東進ハイスクール・東進衛星予備校講師。2013年に「いつやるか? 今でしょ!」のフレーズでブレーク、流行語大賞を受賞した。近著に「受験必要論」(集英社)。48歳。

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