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 きょうは千葉・船橋、あすは市川へ――。都内に住む50代の独身女性は、毎日違う倉庫で働いている。

 倉庫内を動き回りながら荷物を運ぶ、きつい仕事だ。ネット通販で消費者が購入した品物を棚から取り、配送用の段ボール箱に入れ、注文通りの品物が入っているか点検する。広い倉庫で一日中、衣料品、事務用品、化粧品や装飾品の棚をせわしなく行き来すると歩く距離は1日数キロ。「一日の終わりには腰が痛む」と言う。

 登録する派遣会社2社から、毎日、携帯電話にメールが届く。900~1千円程度の時給を比べながら、あすあさってに働く現場を決め、メールを返信する。

 週5回働き、稼ぎは月に13万円ほど。交通費はほとんど出ない。国民年金保険料などを支払うと手元に残るのは8万~9万円。ボーナスはない。高齢の両親と実家で暮らすが、「食べていくのに精いっぱいで貯金はほとんどできない」。

 約30年、懸命に働いてきた。けれども、待遇は下がるいっぽうだった。

 専門学校を出て、20歳のときに、事務職の正社員として就職。キャリアアップのため、仕事をしながら、夜間で都内の有名大学を卒業した。その後病気で、いったん仕事を辞めざるを得なくなった。30代で再就職したときには、派遣の道しかなかった。

 それでも仕事は充実していた。外資系銀行に派遣されていたときには、部下を持つ管理職も任された。当時の収入は、月25万~30万円程度あった。事務職の派遣として、それぞれの会社に1~3年ずつ、10社近く渡り歩いた。

 2年前に、派遣で事務職の契約が満了したとき、次は安定した正社員の職につきたいと思った。厚生労働省の職業訓練プログラムを受講し、パソコンのスキルを磨いた。だが、ハローワークで正社員の職を探すと、キャリアカウンセラーは「あなたに合った職場は見つかりません」と言うばかり。「派遣から抜け出すのは難しい」と実感する。

 50代になったいま、派遣先を選ぶ余地も狭まった。「女性は年齢がいくほど、仕事がなくなっていく」と思う。

 つなぎのつもりだった倉庫への派遣は、もう1年以上になった。

「女性は結婚を」社会の圧力

 日本は、女性が経済的に自立することがむずかしい。

 国税庁の2012年調査では、女性の平均給与は268万円で、男性の502万円の約半分。年間200万円以下の人は、女性だと4割に上るのに対し、男性は1割にとどまる。

 結婚を前提に、「稼ぎ手」である男性の給与は比較的高く、女性は家計の補助という位置づけで低賃金に置かれる傾向がこれまで強かったからだ。

 税や社会保障政策にも共通する。配偶者の年収が103万円未満なら稼ぎ手の所得税が安くなる「配偶者控除」、サラリーマンの配偶者が保険料なしで基礎年金を受けられる「第3号被保険者」がそうだ。

 今年6月の東京都議会で、自民党の鈴木章浩都議は、みんなの党の塩村文夏都議に「早く結婚したほうがいいんじゃないか」というヤジを浴びせた。男性議員たちに「女性は結婚し家庭に入るべき」という「隠れた意識」があることを示すエピソードの一つだ。

 国会や地方議会では男性議員が9割前後を占める。男性中心の議員たちは、結婚を前提とした制度をつくってきた。「女性が活躍できる社会」をめざす自民党本部の5月の会合では「家庭で頑張る女性も評価すべきだ」との声が相次いだ。

 一方、20~64歳の単身女性の間では、所得が年125万円未満の人の割合である「貧困率」は31・6%(2009年)。4人に1人が貧困層である単身男性以上に厳しい状態だ。貧困率は、65歳以上の単身女性だと、46・6%と半数近くにはね上がる。(岡林佐和)

役所勤め、夜は居酒屋でバイト

 役所勤めという安定しているとみられている職業でも、貧困は無縁ではない。

 関西地方の独身の女性市職員(29)は、市内の小中学校数十校を1人で担当するスクールソーシャルワーカーだ。学校でいじめられたり、学習や生活に困難を抱えたりしている子どもたちに対処する大事な仕事だが、身分は非常勤職員だ。

 大学で社会福祉士の資格と高校教員の免許を取った。卒業後は中学校で臨時職員として勤務。発達障害や不登校の子どもの支援をもっと専門的にしたいと大学院で修士号を取り、採用されたのが今の職だった。

 週5日、午前9時前から午後5時すぎまでの勤務で手取りは月17万円。夜8時までの残業や学校の宿泊行事の付きそいは無給扱いだ。

 1DKのアパートの家賃5万円…

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