夏目漱石「三四郎」(第十四回)二の六

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 二人はベルツの銅像の前から枳殻寺(からたちでら)の横を電車の通りへ出た。銅像の前で、この銅像はどうですかと聞かれて三四郎はまた弱った。表は大変賑(にぎや)かである。電車がしきりなしに通る。

 「君電車は煩(うる)さくはないですか」とまた聞かれた。三四郎は煩さいより凄(すさま)じい位である。しかしただ「ええ」と答て置いた。すると野々宮君は「僕もうるさい」といった。しかし一向(いっこう)煩さいようにも見えなかった。

 「僕は車掌に教わらないと…

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