[PR]

 太平洋戦争中の1944年8月、オーストラリア東部カウラで起きた日本兵の集団脱走事件から70年がたった。捕虜収容所から約1100人が脱走を図り、うち230人以上が射殺や自決で亡くなった。だが、豪州人の犠牲者も4人いたことは、ほとんど知られていない。それが気になって、ジョン・ドンカスターさん(77)に話を聞いた。

 豪陸軍訓練所の士官だったジョンさんの父は、脱走兵を捜索中に撲殺された。犯人とみられる日本兵数人は近くで首をつったという。母は何も語らぬまま再婚し、養父と折り合わなかったジョンさんは遠い寄宿学校へ入れられた。

 75年に事件に関する本を読み、初めて父が銃剣しか持っていなかったことがわかった。「日本軍下の豪州人捕虜が報復されるのを恐れ、ほとんど丸腰で捜索させた。ひどい話だ」と悔しそうに話した。日本人を憎んだこともあったが、年を重ねて「それが戦争だ。不幸なものなのだ」と思うようになったという。

 カウラの日本人墓地で行われた70周年慰霊祭。父の墓石に献花する元捕虜の日本人を見つめるジョンさんがいた。(郷富佐子

こんなニュースも