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 ひじを90度に曲げ、車輪に見立てた手をくるくる回して「新幹線」。開業当時、熱海の芸妓(げいぎ)衆がお座敷で披露していた踊りだ。「こだまさん」という名の姉さんもいたという。

 「東京の奥座敷」から「全国の温泉保養地」へ。新幹線の登場とともに、熱海観光は絶頂期を迎えた。社員旅行シーズンには、団体客が連日押しかけ、芸妓衆は千人を超えていた。

 熱海芸妓置屋連合組合長の西川千鶴子さんは、花柳界に身を置いて60年。新幹線開業の4年前に「半玉(はんぎょく)さん」から一人前の「一本(いっぽん)さん」になった。お座敷といえば、大宴会場。お膳とそろいの浴衣姿が見渡すばかりに連なっていた。朝食会場で太鼓や踊りを披露することも珍しくなかった。

 バブル崩壊を経て、団体客は急減。街は次第に活気を失い、芸妓衆は今、150人を割り込んでいる。

 「お座敷がかかるのを待つだけではだめ」と、稽古場の「芸妓見番(けんばん)」を週末に開放し、踊りを披露している。外国語のパンフレットもそろえるつもりだ。

 「海と山に恵まれ、東京にこれほど近い熱海には必ずにぎわいが戻ってくる」。西川さんはそう信じ、後輩の稽古を厳しく見つめ続けている。(細沢礼輝)

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