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 日本最大の日雇い労働者の街、大阪・釜ケ崎にある児童館「こどもの里」は、カトリック団体の学童保育を前身に1980年開館した。まもなく常連になった女の子は、来館すると決まって国語のドリルを開いていた。

 「これ、今日の宿題やねん」。当時、小学3年生のふりをしていた大谷純(42)だ。ドリルは借り物。下校時間を見計らって児童館に顔を出した。なぜ自分だけ学校に通わないのか、わからなかった。ただ周囲に知られたくなかった。

 釜ケ崎のドヤ(簡易宿泊所)の4畳半と3畳の2室で両親と3人の弟の6人で暮らした。日雇いの手配師の父は、稼ぎをアルコールやパチンコにつぎ込んだ。家計は母がたこ焼き屋やドヤ掃除の手伝いでしのぐ自転車操業だった。

 純が最も頼りにしたのが、児童館の職員の荘保共子(しょうほともこ、67)だった。時々、母のつかいで荘保に弟たちのミルク代を借りに来た。いつも天真らんまんな子が、このときばかりは表情が硬かった。涙をこらえている。荘保にはわかった。どんなにつらくても人前で泣かない。純の涙を見たのは、今に至るも2回しかない。

 純が本来なら小5の年、荘保は小学校の運動会の応援に向かった。どこを捜しても純の姿が見えない。ドヤに走った。部屋に母子がいた。「学校、行ってなかったんやね」。うつむき涙する母にわけを聞いた。

 配偶者がそれぞれ別にいる純の…

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