夏目漱石「三四郎」(第二十一回)三の七
その翌日は丁度(ちょうど)日曜なので、学校では野々宮君に逢う訳に行かない。しかし昨日(きのう)自分を探していた事が気掛(きがかり)になる。幸いまだ新宅を訪問した事がないからこっちから行って用事を聞いて来(き)ようという気になった。
思い立ったのは朝であったが、新聞を読んで愚図々々しているうちに午(ひる)になる。午飯(ひる)を食べたから、出掛ようとすると、久しぶりに熊本出(で)の友人が来る。漸(ようや)くそれを帰したのはかれこれ四時過ぎである。ちと遅くなったが、予定の通り出た。
野々宮の家は頗(すこぶ)る…