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 女装の取材をするにあたって、心に決めていたことがある。それは自分自身が女装をすること。我が身をもって体験すれば、「男の娘」たちの心理も少しは理解できるのではないか――。そんな思いで、東京の新宿2丁目にある女装バー「女の子クラブ」に赴き、女装に挑戦してみた。

 女の子クラブは、2012年12月にオープンしたコンセプトバー。店員さんが女装しているのはもちろん、客が女装してお酒を飲めるシステムが最大の売りだ。席料は女性と女装男性(男の娘)が2千円、男性は3千円。この料金内でも衣装やメーク道具は貸してもらえるが、店員さんにメークをお願いする場合には、技術料として別途4千円がかかる。

 初めて女装する人、「彼氏を女装させたい」というカップル、社員旅行のグループなど、客層は実に多彩。団体で訪れた数日後に、こっそり1人でやってくるリピーターもいる。外出自由なので、外国人観光客が店内で女装した後、雷門やスカイツリーで記念撮影して戻ってくる、なんてこともあるのだとか。

 店内は少々薄暗い。女装の初心者から有段者(?)までレベルにばらつきがあるため、メークが未熟な人でも引け目に感じることのないように、との配慮だ。よく見ると、蛍光灯に茶色い粘着テープが巻いてある。こうすることで明かりが自然な暖色になり、化粧のアラが見えづらくなるのだそうだ。

 メークの前に、まずはひげをそらねば。洗面台を使おうとトイレを探すが、ない。男子トイレがない! ママのくりこさん(29)いわく「ここにいらっしゃるのは、みなさん、『女の子』ですからね♪」とのこと。なるほど。

 一応補足しておくと、客の比率は男の娘:女装しない男性:女性=5:1:1という感じらしいので、まったく「男性」客がいない、というわけではない。まあ、これも店のコンセプトに沿った演出のひとつということだろう。

 これまで9年ほど生やしてきたあごひげをそるのは、少し惜しいが致し方ない。ネットで話題のセーラー服おじさんやレディービアードさん、少し前に女装写真を公開した浅野忠信さんのような「ひげ女装」という方向性もなくはないが、今回はあくまで女性らしさを追究することにする。

 ええい、ままよ。意を決してあごをツルッとそり上げ、メークルームへ。今回メークを担当してくれるのは「しあ」さん。黒髪の似合う清楚(せいそ)なたたずまいの男の娘だ。

 「先に服を着替えてくださいね」と言われ、ハンガーにかかった衣装のなかから、好みのものを物色する。セーラー服やアイドル風などバラエティー豊富だが、悪目立ちは避けたいので、いかにも普通っぽいゆるふわ系のワンピースをチョイスした。

 更衣室でワンピに着替えて鏡を見た瞬間、一線を踏み越えてしまった気がした。男子高時代、合唱部の演奏会の余興で女装した時とは、明らかに違う領域だ。

 ここまで来たらもう引き返せない。いよいよメークである。まずは化粧水と乳液で肌の調子を整え、化粧下地を塗りこんでいく。

 ここで、しあさんが口紅を取り出した。しかし、塗るのは唇ではなく、鼻や口の下の部分だ。

 「みなさん、エッ、ここに塗るの? とビックリされるんですよ」

 ひげのそり痕の青み(寒色)に…

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