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 中東ドバイの日本人学校から、日本海に浮かぶ隠岐諸島の高校へ。双子の兄弟の岩井元(げん)さん、玲(れい)さん(16)が2年前に選んだ道だ。

 2人が通う島根県立隠岐島前(どうぜん)高校は、松江市からフェリーで3時間かかる。日本の大学に行くためには日本の高校がいいと考え、祖父から高校のことを教わった。夏休みに帰国。いくつかの高校を見て回った。生徒が目を合わせてあいさつしてくれたのが島前高校だった。温かさを感じたのが決め手だった。

 「高層ビルが立ち並ぶドバイとは正反対の、隠岐の自然の豊かさに驚いた。地域全体が学校。ドバイの学校より小さいけど広い」

 隠岐島前高校は離島ながら、生徒数が2008年度の89人から今年度の156人へとV字回復し、注目されている。

 高校はかつて統廃合の崖っぷちに立っていた。97年に77人いた入学者は08年には28人に落ち込んだ。高校が消えれば、15歳以上の若者がいなくなる。地域にとっては、死活問題だった。

 「島の最高学府を守れ」。島前の3町村長や住民らが08年に立ち上がり、高校の魅力化構想をつくった。通いたい高校にすれば生徒は増えるはず。「ピンチはチャンスだ」と考えた。いくつもの試みが「逆転の発想」から生まれた。

 「小さいことはよいことだ」と10人前後の少人数習熟度別授業を始めた。「田舎は都会にはない自然や人のつながりがある」と地域に根ざしたカリキュラムをつくった。生徒は船のダイヤ改定案から、島の太陽光発電まで考える。「仕事がないから島に帰れない」ではなく、「仕事をつくりに帰りたい」人を育てようと、課題を解決する力をつける教育を目指した。

 島にはコンビニもゲームセンターもない。「だからこそ工夫する力や粘り強さが磨かれる」と都会から生徒を受け入れる「島留学」を始めた。この春入学の「留学生」は31人。8月の島での見学会には全国から親子140人が参加した。

 島根県立大学連携大学院の藤山浩(こう)教授(中山間地域研究)は話す。「日本の高校は『蜘蛛(くも)の糸』の主人公のように、成長神話の糸にすがり、人より先に上へ上へと上がっていけと教えてきた。『東京すごろく』をよしとして生徒を都会に送り続けた。島前高校は人とつながり地域で生きる別のモデルをつくっている」

 高校がいま取り組むのはグローバルな視野を持ちながら、足元のローカルな地域社会をつくる「グローカル人材」の育成だ。10月には2年生がシンガポールに5日間出かけ、シンガポール国立大生に島の課題を英語で発表する。離島での資源リサイクルは、冬場に観光客に来てもらうには……。「都会の島のシンガポールで、田舎の島の高校生が挑む。おもしろいじゃないですか」と常松徹校長。

 なぜ、この高校は人を引きつけるのか。カギは、都会から移住した人々の知恵を借りたことにあった。

■「よそ者」が島の…

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