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 みんなの党の渡辺喜美前代表が代表者を務める政治団体名義の銀行口座から、2010年の参院選前に、渡辺氏に計9千万円が貸し付けられ、その後返済されていたことが、関係者への取材で分かった。同団体の政治資金収支報告書に記載されておらず、この収支が同団体の資金だと認定されれば、政治団体にすべての支出と収入の記載を義務づけた政治資金規正法に抵触する可能性がある。

 渡辺氏は同年、化粧品大手ディーエイチシー(DHC)の吉田嘉明会長から3億円を借りており、このうち9千万円が同団体名義の口座に入った。吉田会長から渡辺氏への資金提供をめぐっては、大学教授らが東京地検に同法違反容疑などで告発状を提出しており、特捜部はこの政治団体の収支についても慎重に調べているとみられる。

 関係者によると、政治団体は「渡辺美智雄政治経済研究所」。宇都宮市に事務所があり、渡辺氏が代表者を務めている。

 みんなの党の調査報告書や関係者によると、同研究所名義の口座から10年3月26日に5千万円(チャート図①)、6月18日に4千万円(同③)の計9千万円が渡辺氏に貸し付けられた。渡辺氏はこの9千万円を6月21日までに党に貸した(同②④)。党は同日、6月24日公示の参院選における候補者の供託金として1億3800万円(同⑤)を支出した。

 一方、渡辺氏は6月30日に吉田会長から3億円(同⑥)を借り、この資金から7月13日に同研究所名義の口座に約9千万円(同⑦)を返済した。

 報告書などによると、一連の資金の流れは、党が参院選に必要な資金を確保するため、渡辺氏が一時的に同研究所名義の口座から9千万円を借り、その後、吉田会長から借りた資金で補塡(ほてん)した形だ。

 同研究所の10年分の収支報告書には、①③の貸し付けと⑦の返済はいずれも記載されていない。

 渡辺氏をめぐっては、10年の参院選前の3億円のほか、12年の衆院選前にも吉田会長から5億円を借りていたことが判明。党が調査し、吉田会長からの借り入れについては「公職選挙法や政治資金規正法に違反する事実は認められなかった」と結論づけた。

 調査報告書では、同研究所は「A」として匿名で表記され、収支の報告義務が生じる政治団体であることも明かされなかった。匿名の理由について「渡辺前代表の同意が得られなかった」と説明。吉田会長以外との資金のやりとりについても、報告書は「違法性の存否について判断しない」としていた。

事務所「記載の必要ない」

 渡辺喜美前代表の事務所は3日、朝日新聞の取材に対し、9千万円の貸し付けと返済について「渡辺議員に対する貸し付けは、ご指摘の政治団体(渡辺美智雄政治経済研究所)の資金ではありません。政治団体の収支に関係しないので収支報告書に記載する必要はありません。政治資金規正法に反するのではないかとの指摘は誤りです」と書面で回答した。

 同研究所名義の銀行口座から出入金されたかどうかの質問には、回答がなかった。

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《政治資金規正法による収支報告書の記載義務》 同法は政治団体の会計責任者に対し、すべての収入、支出などを記載した報告書を提出するよう定めている。不記載や虚偽記載をした人は5年以下の禁錮または100万円以下の罰金となる(公訴時効は5年)。総務省は「政治団体が他者に資金を貸し付けたり、返済を受けたりした場合も記載義務がある」としている。