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 朝日新聞社は7日、週刊新潮の10月16日号に掲載された「新聞協会賞『手抜き除染』キャンペーンに自作自演の闇がある」の記事に事実誤認があるため、同誌編集部に抗議しました。その内容について、読者のみなさまに説明します。

 同誌の記事は、本紙が2013年1月4日以降に報じた福島県の放射性物質除染作業の手抜き問題を告発する元除染作業員の取材協力者の行動について、記者が元作業員に指示していたかのような内容になっていますが、そうした事実はありません。

 同誌の記事では、手抜き除染の現場のやりとりについて、元作業員は「記者からICレコーダーを手渡され、録音を依頼されました」としています。

 しかし元作業員は、12年11月、手抜き除染や除染手当不払いなどを自ら電話で本社に伝えてきました。この際、「作業風景などの写真が提供できる」と提案がありました。その後、折り返し電話した記者に、元作業員から「録音する機械を貸してくれれば、作業の指示を記録する」と提案があったため、記者はICレコーダーを渡しました。

 同誌の記事には、元作業員が記者のインタビューを受ける動画撮影の際、「一枚のメモ帳を渡され、『これを読んでいる所を、録画させて頂いても良いですか』と言われました」という記述があります。しかし、記者はメモは渡しておらず、インタビューの元映像にも何も手に持たずに話す場面が記録されています。

 元作業員が12年12月26日に環境相に送った、手抜き除染を指摘する文書について、同誌の記事では記者が提出を指示したかのような記述があります。しかし、元作業員は文書を出す以前から自ら環境省に手抜き除染や除染手当未払いなどを指摘する電話をかけており、環境相への文書を出したのも元作業員の意思によるものです。

 文書は、記者が元作業員から頼まれ、話を聞きながらパソコンでまとめました。手抜き除染の実態や本人の本籍地など、記者が知り得ない内容が含まれています。

 元作業員は12月中旬、複数の本社記者と福島県内の除染現場の取材に同行しています。同誌には、この際、記者が除染作業員らに「ギフトカードなどを手渡すこともあった」と書かれていますが、そうした事実はありません。

 当時取材した作業員に改めて確認したところ、「ギフトカードなど金券はもらっていない」と話しています。

 これまで本社は、報道機関から取材を受けても、取材経緯を明らかにしてきませんでした。しかし、同誌に事実に反する内容が元作業員の実名による話として報じられたため、経緯を説明しました。

報道の経緯

 本紙は2013年1月4日付朝刊で「手抜き除染 横行」(東京本社版)の見出しで、環境省が福島県で進めている除染作業で、汚染物質が回収されずに現場周辺の山や川に捨てられている実態を報じました。

 取材を始めたのは、12年9月に本社記者と旧知の除染作業員から手抜き作業があるという情報がもたらされたからでした。取材班は12月11~18日に除染現場にのべ130時間にわたって張り込み、環境省のルールに沿わない手抜き作業を13カ所で確認し、写真や動画に記録しました。さらに週刊新潮が取り上げた元作業員を含む約20人から、手抜きに関わったとの証言を得ました。

 本紙報道を受け、石原伸晃環境相(当時)は13年1月6日に「除染適正化推進本部」の設置を指示しました。同本部が18日にまとめた調査結果では、取材班が伝えた事例を含め、5件で手抜きがあったと認定しました。環境省はこれらについて行政処分や指導を出し、除染の監視態勢を強化するなどの再発防止策を策定しました。