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 スウェーデンの王立科学アカデミーは8日、今年のノーベル化学賞を、米ハワード・ヒューズ医学研究所のエリック・ベッチグ、独マックス・プランク生物物理化学研究所のシュテファン・ヘル、米スタンフォード大のウィリアム・モーナーの3氏に贈ると発表した。

 業績は「超解像蛍光顕微鏡の開発」。従来の光学顕微鏡の限界を超える非常に小さなものが見える顕微鏡を開発し、神経細胞などの中の分子を生きたまま観察、パーキンソン病やアルツハイマー病などのしくみの研究に貢献した。医学・生物学の研究に革新をもたらすと期待されている。

 授賞式は12月10日にストックホルムである。賞金の800万スウェーデンクローナ(約1億2千万円)は受賞者3人で分ける。

 学校教育などでも使われている光学顕微鏡は、光の性質上、髪の毛の太さの500分の1ほどにあたる1万分の2ミリより小さいものを見ることができない。

 このため、細胞内で重要な働きをするたんぱく質などの分子を観察するのは難しい。電子顕微鏡を使えばもっと小さなものが見えるが、細胞を凍らせるなどの準備が必要で、生きたまま観察するのは難しかった。

 ヘル氏は2000年、特定の波長のレーザー光をうまく組み合わせて当てることで、ナノメートル(100万分の1ミリ)単位の小さな分子を光らせて観察する顕微鏡を開発した。

 ベッチグ、モーナー両氏はそれぞれ、レーザー光を個々の分子に当てて光らせる技術を用いて、動きや働きを調べる「1分子顕微鏡」を開発。ベッチグ氏は06年、この技術で細胞内の分子を観察することに成功した。

 産業技術総合研究所の加藤薫・主任研究員(生物物理学)は「ヘル氏の顕微鏡を用いると、例えばがん細胞が転移する際、たんぱく質が作る構造が変化するのを、分子レベルで生きたまま見ることができるようになった。本格的に使われ出したのはこの2、3年だが、今後、さまざまな病気の解明の貢献に期待できる」と話した。

 この分野では、柳田敏雄・大阪大特任教授(67)が、筋肉細胞などにあるたんぱく質の1分子を顕微鏡で観察し、1995年、英科学誌ネイチャーで発表している。今回の化学賞の解説資料でも、柳田さんの業績が紹介された。

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 〈エリック・ベッチグ氏〉 1960年、米国生まれ。88年、米コーネル大で博士号。米ハワード・ヒューズ医学研究所グループ長。米国籍。

 〈シュテファン・ヘル氏〉 1962年、ルーマニア生まれ。90年、独ハイデルベルク大で博士号。独マックス・プランク生物物理化学研究所所長。ドイツ籍。

 〈ウィリアム・モーナー氏〉 1953年、米国生まれ。75年、米ワシントン大卒。82年、米コーネル大で博士号。スタンフォード大教授。米国籍。

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