夏目漱石「三四郎」(第九十七回)十の四
「また苦しくなったようですね」
女は何にもいわずに、すぐ姿勢を崩して、傍(そば)に置いた安楽椅子へ落ちるようにとんと腰を卸(おろ)した。その時白い歯がまた光った。そうして動く時の袖とともに三四郎を見た。その眼は流星のように三四郎の眉間(みけん)を通り越(こし)て行った。
原口さんは丸(まる)卓(テ…
「また苦しくなったようですね」
女は何にもいわずに、すぐ姿勢を崩して、傍(そば)に置いた安楽椅子へ落ちるようにとんと腰を卸(おろ)した。その時白い歯がまた光った。そうして動く時の袖とともに三四郎を見た。その眼は流星のように三四郎の眉間(みけん)を通り越(こし)て行った。
原口さんは丸(まる)卓(テ…