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 核兵器の材料にもなるプルトニウムについて、日本が国内外に保管する量はいまや47トンにのぼり、「余剰プルトニウムを持たない」という国際公約を日本が果たせるか、国内外で厳しい視線が注がれている。物理学者で核不拡散の権威でもある米プリンストン大名誉教授のフランク・フォンヒッペル氏と、ドイツ出身の核技術コンサルタントで、使用済み燃料容器(キャスク)の技術開発にも携わったクラウス・ヤンバーグ氏に、日本が抱える問題点や課題を語ってもらった。

 両氏は韓国で7月に開かれた専門家会合に招かれ、その直前に来日した際、日本政府に対してプルトニウム管理の問題を指摘する書簡も提出している。

安倍首相の「誓い」に疑問

 【フォンヒッペル氏】2014年3月に開かれた核保安サミット(オランダ・ハーグ)で新しい展開があった。安倍晋三首相が、核兵器に利用可能な核物質のストックを最小化するとの声明を出した。それに対する我々の反応を示したいと考え、日本政府の関係大臣をはじめ、原子力委員会と原子力規制委員会の両委員長に書簡を提出した。

 日本はすでに大量のプルトニウムを持っているのに、(使用済み核燃料からプルトニウムを分離する)六ケ所再処理工場(青森県六ケ所村)の運転まで始めれば、新たな問題の上塗りになる――と訴えたかったからだ。プルトニウムはあくまで核兵器物質である。

 私は米国カーター政権のアドバイザーとして、この問題とは40年近く前に関わり始めた。米国は再処理計画を進めるべきかどうかを検討し、結局は計画を続けないことを決めた。

 英国も最近、再処理を中止することを決め、再処理を実施する国は減ってきている。私たちはこの流れを歓迎しており、日本でも本格的に議論されることを願っている。

 安倍首相はオバマ米大統領と共同で声明を出したが、60カ国近い首脳たちを前にしてだった。つまり、厳粛な誓いという意味を持つ。

 しかし、この誓いがどう解釈されるのか疑問が残る。私たちが書簡で批判しているのはこの点だ。

 日本の政策は、「利用計画のないプルトニウムは分離しない」とされている。しかし、この「利用計画」の規定がだんだん甘くなってきている。

 元々の計画では、(ウランにプルトニウムを混合した)MOX燃料を使う原子炉が、2010年までには16~18基になるはずだった。これによって、ヨーロッパでの再処理で使用済み燃料から分離されるプルトニウム量と、日本の原発で消費する量とが、だいたい一致するという見込みだった。

 そして、六ケ所再処理工場が運転を始める前には、ヨーロッパで分離したプルトニウムを全部使ってしまう考えだった。だが、分離した45トンほどのプルトニウムのうち、2トンしか照射(原子炉内で燃料として燃やし、核兵器に直接使えないようにすること)ができていない。

 従って、六ケ所再処理工場の稼働でさらにプルトニウムを分離するのは、大いなる間違いに見える。

 日本は英国の失敗と同じ道をたどっている。英国も元々、(消費した以上の燃料を生み出す)高速増殖炉計画のためにプルトニウムの分離を始めた。

 英国は増殖炉計画は20年前に中止したが、プルトニウムの分離は続けた。今では約100トンのプルトニウムを抱えている。MOX工場も失敗したため、日本のプルトニウムも17~18トン抱え込んでいる。処理には膨大な出費が伴う。

脱原発を決めたドイツ

 【ヤンバーグ氏】プルトニウムのストックを避ける標準的な道は、MOX燃料の製造だ。ドイツはこの道をたどってきた。福島第一原発事故後に脱原発を決めた法律の規定通り、原子炉を閉鎖するまでに、古い再処理契約で出てきたすべてのプルトニウムを使い切ってしまいたいと考えている。

 ドイツの電力会社はコスト面から再処理を放棄し、(使用済み燃料をそのまま地下に埋める)直接処分もできるよう政府に求めた。ドイツでのMOX燃料の利用はうまくいったが、再処理は死んでいる。なぜなら、その経済性が神話に過ぎないからだ。増殖炉計画も放棄された。

 【フォンヒッペル氏】ドイツは、短期間しか国内においてプルトニウムのストックを持ったことがない。MOX燃料はフランスから「ジャスト・イン・タイム」方式で到着する。

 【ヤンバーグ氏】最後のMOX燃料は2016年に到着する予定だ。最後の炉が閉鎖になった時には照射が終わり、プルトニウムのストックはない。

 【フォンヒッペル氏】ドイツの再処理プラントは、ずっと前に閉鎖された。

 【ヤンバーグ氏】あのプラントは1990年に閉鎖され、廃止措置が始まった。現在も解体が終わっていない。この処理施設に隣接して、放射性物質の廃液をガラスで固める施設を作らなければならなかった。最後に高レベル廃棄物がガラス固化されたのが2010年のことだ。しかし、タンクの底には、300リットルの高レベル廃棄物が残っている。放射能レベルは極めて高い。大変なお金が今後もかかるということだ。そして、ガラス固化工場の解体が待っている。現時点での解体の総費用は、当初の建設コストの83倍という驚異的なレベルに達している。これが完全に六ケ所に当てはまるというわけではないが、再処理工場の解体が建設費用のレベルではないことは警告しておきたい。

韓国「日本のように再処理したい」

 【フォンヒッペル氏】韓国は日本の例に倣って再処理をしたがっている。日本は今、再処理をしている、つまり核兵器に使えるプルトニウムを分離している唯一の非核兵器国だ。韓国が2番目となれば、それに続くものが出るだろう。これは、核不拡散体制を傷つけてしまう。

 韓国は米国との原子力協定を今年、更新するはずだった。しかし、日本と同じ再処理の権利を与えられるべきだとの韓国の主張を米国が拒否し、両国は元の協定を2年延長することでしか合意できなかった。

 韓国は再処理が必要な理由について、日本と同じ主張をしている。高速増殖炉で使う燃料の必要性ではない。原発の使用済み燃料プールが満杯になっていて、使用済み燃料の持って行き場がないと言うものだ。

 韓国の原子力の将来は再処理にかかっていると彼らは主張している。プールが満杯になれば原発は閉鎖しなければならなくなるというわけだ。米国は、我々と同じことをすれば良いではないかと主張している。原発の敷地内に使用済み燃料を乾式貯蔵(プールでなく地上で保管)するというものだ。だが、韓国でも日本と同じように、地方政府がこれを許さないという。

 韓国では以前、再処理推進派の声しかなかった。現在では、別の方法についての議論が起きている。我々が韓国に招かれたのは新しい展開だ。これまでは、「近づくな」というのが彼らの態度だった。

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