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 「北朝鮮が韓国に攻めてくれば、核兵器の使用も辞さない」。

 米国のパネッタ元国防長官が10月に出した回想録「価値ある戦い(Worthy Fights)」が、関係国で注目を集めている。朝鮮半島有事での米軍の核兵器使用の可能性について、つい最近まで米軍首脳だった人物が明らかにしたためだ。

 オバマ大統領のもと、パネッタ氏は2009年1月から11年6月までCIA(米中央情報局)長官、11年7月から13年2月までは国防長官を務めた。

 パネッタ氏は回想録で、10年にCIA長官として訪韓した際、当時のシャープ在韓米軍司令官から有事での作戦計画について説明を受けたことを紹介。「北朝鮮が(韓国との)境界線を越えてくれば、米軍の司令官が米軍と韓国軍を指揮して韓国を防御する。必要ならば、核兵器の使用も含まれる(including by the use of nuclear weapons,if necessary)」というものだ。淡々と記されていた。

 パネッタ氏は11年秋、国防長官として再びソウルを訪れ、韓国の金寛鎮(キム・グァンジン)国防相(現・大統領府国家安保室長)らと会談し、北朝鮮の核・ミサイル開発について議論した。回想録によれば、この時も「北朝鮮の攻撃から韓国を守るため、必要なら核兵器の使用も含まれる、との約束を再確認した」というのだ。

 発言があった当時、北朝鮮の核・ミサイル開発や10年11月、北朝鮮軍が韓国側の島を砲撃し、民間人を含む4人が死亡した「延坪島(ヨンピョンド)事件」を機に、南北間の緊張は高まっていた。韓国では「目には目を」と独自の核開発を訴える声も上がった。パネッタ氏が回想録で触れた「核兵器の使用」は、米国の「核の傘」が朝鮮半島有事にきちんと機能することを韓国側に示すことで、北朝鮮を牽制(けんせい)すると同時に、独自の核武装を求める韓国内の強硬な意見を鎮めるねらいもあったとみられる。

 とはいえ、米オバマ政権で要職を担ってきた人物が、朝鮮半島有事での「核兵器の使用」の可能性を公にしたのは極めて異例だ。米国で回想録が刊行されると間もなく、韓国では各メディアが「米国、北の南侵時、必要なら核兵器使用」(ハンギョレ)などと相次いで報じた。

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 より敏感に反応したのが、核兵器使用の対象とされる北朝鮮だ。国営の朝鮮中央通信などを通じて連日、声明などの形で強く反発するとともに、独自の核開発を正当化した。

 「我々が米国の核の脅威に対処し、自衛のための核抑止力を頑丈で強固なものにしてきたことが、どれだけ正当なことであるかを示している」(10月16日、朝鮮平和擁護全国民族委員会の報道官声明)

 「米国は、朝鮮戦争の時から今日に至るまで六十余年間、我が共和国に対する核兵器の使用を、絶え間なくたくらんではきたが、今回のように、露骨に、ふてぶてしくも核攻撃計画をあらわにしたことはなかった」「我々に対する公然たる核戦争宣戦布告と変わりない」(同月17日、北侵核戦争演習反対・全民族非常対策委員会の報道官声明)

 「我々の軍隊と人民は、米国の敵視政策と核威嚇策動を根こそぎ潰(つぶ)す瞬間まで、自衛のための核抑止力を、質量ともに、より強化していく」(同月20日、朝鮮中央通信論評)

 朝鮮半島有事での「核兵器の使用」が公にされたことに、北朝鮮がどれだけ警戒心を強くしているかを示している。北朝鮮はこれまでも「米国の核の脅威」を核開発の口実としてきたが、今後はその証拠として繰り返し、パネッタ氏の回想録をとりあげるだろう。

 米国や韓国の立場からすれば、朝鮮半島有事での「核兵器の使用」発言は、北朝鮮の核・ミサイル開発を牽制するだけでなく、北朝鮮に韓国への武力侵攻を思いとどまらせて「第2の朝鮮戦争」を防ぐ狙いがあるといえよう。一方、北朝鮮は「米国の核の脅威」がそもそも核開発に踏み切らせた元凶だと主張する。そもそも、どちらが発端なのか。手がかりを探るには、朝鮮戦争(1950~53)までさかのぼる必要がある。

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