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 衆院選で候補者が自民と共産だけの小選挙区は全国で25に上り、前回2012年の6から急増した。知名度の高い自民候補が立候補した区が目立つ。急な解散・総選挙は、民主や維新などの準備不足もあらわにした。有権者からは「選択肢が少なすぎる」と不満が漏れる。

 群馬4区。「アベノミクスはすでに破綻(はたん)している。一部の大企業と資産家をもうけさせただけだ」。公示日の2日、群馬県高崎市で共産新顔の萩原貞夫氏(65)は強調した。一方、自民前職の福田達夫氏(47)は「アベノミクスで日本は世界の表舞台に戻った。地方ではまだ見えにくいが、成果を結びつけていく」と訴えた。同区で立候補したのは、この2人だけだ。

 福田氏は元首相の康夫氏の長男で、祖父も元首相の赳夫氏。民主が政権を奪った前々回の09年は、康夫氏が民主と諸派の新顔を破った。前回12年は、民主、維新、共産がそれぞれ候補者を擁立したが、福田氏が得票率56%で初当選した。中選挙区時代から62年間、「福田家」が議席を守る。今回の選挙で萩原氏陣営は「自共対決は分かりやすい構図」と自民批判票を狙う。

 民主は、前々回に比例復活当選した議員が離党。前回は25歳の新顔を立てたが、得票率10%で惨敗した。候補者が決まらないまま、今回の選挙を迎えた。県連会長の黒沢孝行県議は「いろんな方に打診したが、断られた」と明かす。そして「県民の選択肢をなくしてしまい、大変申し訳ない」と話した。維新も今回、擁立できなかった。

 二者択一の選挙に有権者は戸惑う。高崎市の会社員の女性(48)は「仕方なく自民に投票する。勢力が小さい共産は国政で意見が反映されるか不安」。高崎経済大学2年の男性(21)は「入れたい候補がいないが、白票にはしたくない」と迷う。会社員の男性(68)は「解散に大義がなく、右傾化にも危機感がある。自民を懲らしめたい」。だが、選択肢はもう一つしかなく、「初めて共産に投票する」と話した。

 三重4区も、自民前職で7期目をめざす田村憲久氏(50)と共産新顔の松木豊年氏(62)の2人の戦いだ。田村氏陣営は「閣僚経験者として選挙期間中の半分は応援で不在」。松木氏陣営には今のところ、党幹部らが応援に入る予定はなく、街に選挙戦の熱気は薄い。

 民主は、公認が内定していた元職が来春の県議選候補選びをめぐる党内の亀裂から解散直前に公認を辞退。後任選びが間に合わなかった。連合傘下の労組幹部は「事実上の自主投票。組織票は比例区と統一地方選で生かすしかない」。

 自共の候補者しかいない小選挙区は他に、神奈川11区や茨城2区、鳥取1区、福岡8区など。閣僚経験者ら知名度の高い自民候補が目立つ。また、公明と共産の2人だけという選挙区を加えると、「与党VS.共産」の構図は28を数え、全小選挙区の1割を占める。

 「自共のみ」の急増を、政治評論家の浅川博忠さんは「民主など野党の怠慢。民主は、前回の惨敗で新たな人材獲得が進まなかった事情もある。保守色を強める自民と対極の共産しか選択肢がない選挙では、有権者の関心が高まらない」とみる。加藤秀治郎・東洋大教授(政治学)は「候補者擁立で有権者に選択肢を与えるのは、政党の役割。勝ち目が薄く候補者が見つからないなら、比例区で名簿上位に優遇して擁立する方法もあった」と話した。(遠藤雄二、本井宏人、岡雄一郎)

     ◇

「自民VS.共産」の小選挙区

茨城2、栃木5、群馬4、埼玉2、千葉12、神奈川11、富山3、岐阜2、三重4、兵庫9、和歌山3、鳥取1、岡山5、広島5、徳島2、福岡6~8、長崎3、熊本2・3、宮崎2・3、鹿児島2・5

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