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 音楽家の椎名林檎がアリーナツアー「林檎博’14 -年女の逆襲-」で全国をまわっている。先月29日、さいたまスーパーアリーナで初日のステージを見た作家の西加奈子が、朝日新聞デジタルに論評を寄せた。

    ◇

 椎名林檎さんのライブ、「年女の逆襲」の間ずっと、私は涙を流していた。自分でもわけの分からない涙が、とにかく溢(あふ)れて溢れて止まらなかった。

 そんな風になったのは以前、ジンガロという舞台で、本物の馬が走る様子を見たとき以来だ。目の前を疾走する馬の、その姿を見て、やはり形容出来ない涙が止まらなかった。

 二度流したこの涙の理由を考えた。もちろん言葉にはしがたいのだが、暴力的に名づけると、それは「美しいものに圧倒された涙」だった。それも、無自覚な美しさだ。例えば馬が走るさま、その、「ただ走っていること」、そこにあるだけで絶対に美しいものに、私は圧倒されたのだ。

 椎名林檎さんの舞台は、とても自覚的であるという。確かに今回、花道から登場した彼女が、次々現れる映像と呼応し、ギターを鳴らし、変幻自在の声を出し、様々な衣装に身を包んで我々を高め、焦(じ)らし、最後、これ以上ない挑発的な姿、仕草(しぐさ)、声で圧倒しながら去ってゆくその瞬間まで、彼女の自覚はゆき届いていた。

 だがその徹底した自覚は、結果…

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