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 会議は踊る――。世界史の外交舞台となってきたオーストリア・ウィーンの王宮で12月8、9の両日、第3回「核兵器の人道的影響に関する国際会議」が開かれた。核保有国の米国と英国も初参加し、158カ国の政府や国際機関、市民社会の代表らが、核兵器が使われた場合の科学的影響や核軍縮の緊急性などを議論した。

 議長総括や取材を通じて浮かび上がったのは、世界の大多数の国々が求める「核兵器禁止条約」への潮流に水をさす米英など核保有国政府の高慢さと、世界唯一の戦争被爆国でありながら核廃絶への明確なメッセージを打ち出せない日本政府の優柔不断さだった。

 そもそも、「核兵器の人道的影響に関する国際会議」が始まったのは、核不拡散条約(NPT)体制に対する非核保有国側の不満が背景だ。

 1970年発効のNPTは核兵器保有を米国、英国、フランス、ロシア、中国の5カ国に限る一方、これらの国々に核軍縮交渉義務を負わせる。しかし、NPTを中心とした核軍縮の議論は進まず、インドやパキスタン、北朝鮮、イスラエルといったNPT枠外の核保有国も出現。非核国の間でいらだちが募っていた。

 そんな中、2010年のNPT再検討会議(5年に1度開催)の最終文書で「核兵器が使われた場合の壊滅的な人道的結果」への懸念が明記された。これを受け、13年3月にノルウェーが第1回の「人道」会議を開いた。ノルウェーは、かつてクラスター爆弾の非人道性をめぐる議論を受けて禁止条約づくりを主導し、実現させた。今年2月のメキシコでの第2回会議では「核兵器禁止条約」の策定に向けた機運が高まった。

 11月になって、第3回のウィーン会議に米政府が初参加を表明。その狙いについて、米モントレー不拡散研究所のウィリアム・ポッター所長(67)は事前のインタビューで、「米政府は参加したほうが得策だと判断したのだろう。核兵器国の一角が参加したことは、来年のNPT再検討会議でも採り上げられる。その結果に影響を与えることもできる」と指摘していた。

◆インタビューのURL(記事末尾にリンクがあります)

 (日本語)http://www.asahi.com/articles/ASGD40GQ7GD3PTIL03C.html

 (英語)http://ajw.asahi.com/article/views/opinion/AJ201412070011別ウインドウで開きます

     ◇

 会議に先立つ6、7の両日、ウィーン旧市街で「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」による市民社会フォーラムが開かれた。各国のNGOや政府関係者、研究者ら約600人が参加。1996年に国際司法裁判所(ICJ)が「核兵器は一般的に違法」との勧告的意見を出す審理にあたったスリランカのクリストファー・ウィラマントリー元判事や、今年4月に核保有国を提訴したマーシャル諸島のトニー・デブルム外相らが講演し、「核兵器禁止条約」策定への機運をさらに盛り上げた。

 8日、広島で被爆したサーロー節子さん(82)の証言で、ウィーン「人道」会議が開幕。「一発の爆弾が、69年たった今も被爆者を放射線の被害で苦しめている。人類と核は共存できない」「被爆者はメッセージを発してきたが、成果が少なく憤りを感じてきた。ここウィーンで勇気を持って前に進み、核兵器禁止条約を具体的に交渉する場にしましょう」と訴えた。

 続く「核実験の影響」に関するセッション。米西部のネバダ核実験場の風下の町、ユタ州セントジョージから来た米国人女性ミシェル・トーマスさん(62)はこう訴えた。

 「母親が私を妊娠した時、(米政府によるネバダでの)核実験が行われ始めたのです。母親は政府や地元紙に手紙を書きました。『(核開発競争をしている)ロシア人ではなく、米国人に殺される』と」

 車いすのまま証言したトーマスさんは乳がんなど4種類のがんを患っている。「今も家族や知人が次々とがんで亡くなっている」「核兵器を持つ理由はありません。このことを人々に知らせたい」。涙ながらの訴えに、会場から大きな拍手がわいた。

 しかし、同情的だった会場の雰囲気は、米国のアダム・シャインマン核不拡散担当大統領特別代表の質疑応答時の発言で一変した。

 「米政府は、核兵器禁止条約に…

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