[PR]

 高齢化に伴って増え続ける認知症。5年で65万人増えるとの推計がある。軽度認知障害と呼ばれる予備軍も含めれば800万人超とされる。検査技術の進歩もあって、早い段階で診断される人も増えてきた。

 他の病気なら早く見つかることは歓迎されても、認知症は「早期診断、早期絶望」とも言われる。「認知症になったら何もできない」と本人も周囲も考えてしまいがちだからだ。

 それでも支援があれば、状況は変わる。

 東京都世田谷区では、認知症の人やその手前にいる人の家を看護師や作業療法士が訪問。生活の困難を減らす工夫を一緒に考える。例えば「料理ができない」という悩みの原因がなべを探せないことなら、収納場所に「なべ」と書いて貼っておく、といった具合だ。家族の相談にものる。訪問先の様子は医師や福祉の専門家が加わったチームで共有し、受診を促す、介護保険サービスの利用を勧める、といった方針を決めていく。

 海外でも支援策を充実させてきた。英国スコットランドでは診断を受けた人の窓口となる支援者を1人に定める。この人に聞けば、認知症に関する情報もわかるし、患者交流会の紹介もしてもらえる。先月、東京で開かれた認知症に関する国際会議で報告された事例だ。

 早い段階から専門家が関わって支障が出ている部分を補えば、自宅で暮らす期間を延ばすことができる。今までのように生活できると、本人の自信にもつながる。

 認知症の人の家族を対象にした調査では、より早い診断が可能になった場合、「長い間、精神的な負担を抱えなければならない」「介護や経済支援などのサポート体制が整っていない」といった懸念が示されている。支援の必要性が読み取れる。

 政府も新たな認知症対策をつくる方針を示している。生活全般を支える対策を目指して、徘徊(はいかい)による行方不明者問題や詐欺被害の防止なども検討される見通しだ。

 認知症の人たちが自ら政策提言などに取り組む団体「日本認知症ワーキンググループ」が10月に発足している。当事者の体験や意見を集約して支援策につなげる意向だ。

 診断後すぐのカウンセリング、情報を得られる場、仲間、社会参加して人の役に立つ機会など、当事者が求める支援はさまざまだ。せっかく生まれた団体である。その声を対策に反映させて、「早期絶望」の治癒につなげてほしい。

関連ニュース