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 STAP細胞をめぐる問題で、理化学研究所の調査委員会(委員長=桂勲・国立遺伝学研究所長)は26日、論文でSTAP細胞からつくったとされた細胞は調べた限りではすべて、別の万能細胞である既存のES細胞に由来することが確実になったとする報告書を発表した。細胞の作製時にES細胞が混入したと認定している。ただ、故意か過失か、誰が行ったかは特定できなかったという。

 調査委は9月に設置され、外部有識者の委員らが不正の全容解明を進めてきた。調査対象は、小保方晴子元研究員と共著者の若山照彦・山梨大教授、丹羽仁史・理研チームリーダー。小保方氏や若山氏の研究室に残っていたSTAP細胞に由来する細胞や実験の元データ、関係者の電子メールなどを約4カ月かけて詳しく調べた。

 研究室に残っていたSTAP細胞からつくられたとされる細胞を遺伝子解析して、そのデータを若山研究室でつくられたES細胞や小保方研究室にあったES細胞と比較したところ、特有の遺伝子などの特徴が酷似していた。

 STAP細胞が万能細胞であるとする根拠を示すための実験に用いられた組織なども分析し、いずれもES細胞に由来する可能性が高いとした。調査委の調査に、小保方氏は「私が混入させたことは絶対ありません」と答え、ほかの関係者も全員が混入させたことを否定したという。STAP細胞をつくっていた部屋に入室できる人は多く、調査委はだれが混入したか決定できないと結論づけた。

 また、論文に記載された図表のうち2点について、元となる実験が日程的にできないことが小保方氏の出勤記録から明らかだったなどとして、新たに小保方氏による捏造(ねつぞう)と認定した。ES細胞は作製方法が確立された万能細胞で、研究現場では広く利用されている。桂委員長はSTAP細胞はES細胞と「ほぼ断定していい」と話した。

 小保方氏の論文作成を指導した理研の笹井芳樹氏(故人)や、小保方氏が論文の主たる研究をした時期に所属していた研究室の責任者だった若山氏については、見ただけで疑念がわく図表を見逃した責任は大きいとした。また、著者らが適切な行動をとっていたらSTAP問題はここまで大きくならなかった可能性が高いと指摘した。

 STAP細胞は小保方氏らが1月に英科学誌ネイチャーで発表。マウスの体の細胞を弱酸性の液体で刺激するだけでつくれる新型万能細胞とされたが、論文は7月に撤回され、今月19日には理研が「存在を確認できなかった」と発表した。

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STAP細胞論文の調査報告書の主な結論

・STAP細胞から作ったとされた細胞や組織は、すべてES細胞の混入に由来する、あるいはそれで説明できる

・STAP論文はほぼすべて否定された

・これだけ多くのES細胞の混入があると、誰かが故意に混入した疑いをぬぐえないが、実行した人物や故意かどうかは決定できない

・本当に行われたか証拠がない実験もいくつか存在する

・実験法の初歩的な間違いなど過失が非常に多い

・明らかに怪しいデータがあるのに、共著者らはそれを追究する実験を怠った

・若山照彦氏と笹井芳樹氏の責任は特に大きい

・論文中の二つの図について、小保方晴子氏によるデータの捏造(ねつぞう)があった

・若山氏と丹羽仁史氏については、研究不正と認定できる事実はなかった

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STAP細胞論文問題を巡る主な経緯

 1月30日 STAP細胞の論文が英科学誌ネイチャーに掲載

 2月18日 論文への疑義の指摘を受け、理研が調査委員会を設置

 4月1日 理研が調査委の最終報告を発表。2件の研究不正を認定

 4月9日 小保方晴子氏が会見。「STAP細胞はあります」などと主張

 6月30日 理研が論文の新たな疑義に対し、予備調査を始めたと発表

 7月1日 小保方氏による検証実験を開始

 7月2日 ネイチャー、論文を撤回

 8月5日 論文作成を指導した理研の笹井芳樹氏の自殺が発覚

 8月27日 理研の検証実験チームが「STAP細胞作れず」と中間報告

 12月19日 理研が検証実験を打ち切り。STAP細胞について「存在の確認に至らなかった」と発表

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 〈ES細胞〉 胚(はい)性幹細胞(embryonic stem cell)のことで、筋肉や神経など体のほとんどの臓器になることができる万能細胞のひとつ。1981年にマウスで、98年にヒトで初めて作製された。受精卵を壊してつくるため、倫理面での課題があるとの指摘もある。