[PR]

 6年前、仕事帰りのみずきは携帯で検索をかけた。〈束縛する 彼氏〉。見つけた恋愛コラムを、混み合う埼京線の車内でよみふける。当時22歳。すべては、ネットで知り合った海渡(かいと)の男心を知るため、だ。

 女でありながら、男を装ってオンラインゲームの交流サイトに書き込んでいた。海渡は同じサイトに出入りする一人。高知で暮らす高校2年生で、付き合っている彼女に男友達が多いことに悩んでいた。「やきもきする。でも、仲良くするな、なんて言えない」

 男性と付き合ったことなんか一度もないのに、恋愛経験豊富なお兄さんとして相談に乗っていた。「君は特別悪いやつじゃない。誰でも、やきもち焼くよ」。思い詰めて考える姿勢に、どこか自分と同じにおいを感じていた。

 みずきにはコンプレックスがあった。おしゃれをしたり、髪形や服をほめあったりと「ふつうの女子」のすることが苦手だった。整体師として働く職場でも、天気の話のあとに続ける言葉が見つからない。どこかで男同士の関係の気楽さに憧れていた。だから、性別を偽れるネットの世界にはまっていた。

 「電話しようぜ」。やりとりをして3カ月が経ったころ、海渡からメールが届いた。素直にうれしかった。でも男と偽ったことを何と言えばいいのだろう。携帯を握りしめて1時間。どうせ嫌われるなら打ち明けよう。正座で番号を押した。

 「ごめんなさい」

 何度も額を床にくっつけた。海渡は驚いてはいたが、許してくれた。毎日の電話が、2人をさらに近づけていった。

     ■  …

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

有料会員限定記事こちらは有料会員限定記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。

980円で月300本まで有料記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら