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 「介護福祉士」の資格は、待遇を大きく変えてはくれなかった。埼玉県内の介護福祉士の男性(55)は昼はデイサービス事業所に勤め、夕方からはスーパーでアルバイトをする生活が続いている。

 介護福祉士は、介護の専門的な知識や技術を持つ人に与えられる国家資格で、1989年に始まった。介護職員の中核になって高齢者を世話する人たちだ。

 男性は機械の整備・販売業を営んでいるが、業績が伸び悩んで厳しくなり、約5年前から介護職員として働くようになった。介護福祉士は3年の実務経験があれば受けられるため、昨年春に国家試験を受けて合格した。

 ところが、資格をとっても給料は変わらなかった。デイサービス事業所からの月給は手取りで10万円ほど。これでは夫婦2人で暮らせないため、スーパーのアルバイトで月に手取り5万円ほどを稼いでいる。

 「実務経験を積み、試験も9割正答したが、なんのための資格かわからない。もっと評価される資格にならないと意味がない」。男性はそう言う。

 昨年春に試験を受けたとき、会場に集まった受験者は同じ年配が多かった。若い人は少なかったという。

 介護福祉士は国家試験のほか、専門学校などの介護の養成学校を卒業すれば資格がとれる。厚生労働省の検討会は、介護福祉士の質を一定以上にするため、2017年から卒業生にも国家試験を義務づけることができるかを議論してきた。

 だが、昨年8月、先延ばしする方針を決めた。関係者によると、養成学校などから、介護を学ぼうとする若い人がさらに減ってしまうという声が出たという。

「段位」登場に現場困惑

 資格は本来、就職や昇給に役立つものだ。だが、資格づくりや仕組みの変更ばかりが目立ち、逆に現場をとまどわせる例もある。

 12年秋、東日本大震災の被災地で「キャリア段位制度」が始まった。介護職員の技術や能力を七つの段位(レベル)に認定する仕組みだ。

 しかし、その年、当時の民主党政権による「事業仕分け」で早々に「廃止」という結論が出た。すでに介護福祉士などの資格があり、ちがいがはっきりしなかったからだ。

 それでも段位制度は廃止されず、13年秋からは全国に広がった。入浴や食事、トイレの介助など実技の評価に重点を置くようにして、これまでの資格とすみわけることにしたという。

 段位を認定するのは、社団法人のシルバーサービス振興会(東京都)だ。元厚労事務次官の水田邦雄氏が理事長を務めている。

 段位はまず、介護施設の職員が振興会の講習を受けて評価者になる。この評価者がほかの職員の仕事ぶりをみて段位を決め、振興会に認定してもらう。

 東北地方にある介護施設では、評価者になった職員が昨年5月から同僚1人の評価を始めた。3カ月で終わる予定だったのに、半年以上たったいまも終わるめどさえたたない。

 チェックするのは約150項目に及ぶ。たとえば、食事の介助では献立を説明するなどの声かけ、食べたいものを聞いているか、食事や水分の量の記録をしたかなど多岐にわたる。

 評価者は自分の仕事をこなしながら、同僚について回ってチェックしなければならない。「ただでさえ人手が足りず、評価の時間をとれない。休日を使って評価することもある。約80人の職員の評価には何年かかるんだろうか」という。

 厚労省は、職員の給料を引き上げるなどの待遇改善の条件を満たした施設には、介護報酬に加算をしている。その条件のひとつが段位制度の利用だ。

 14年度は、評価者の講習費用などのために振興会に約1億5千万円の予算をつけた。15年度からは予算をつけず、講習費は施設が負担する。振興会に段位を認定してもらうのも、1回につき7100円かかる。

 しかし、段位は七つあるのに、いまのところ具体的な基準が整っていて認定を受けられるのは下から4段階までだ。評価に手間もかかるので、振興会が認めた評価者は約8千人いるのに、段位を認定された人は200人余りしかいない。

 「段位に応じて給料を上げようにも、手間がかかって昇給できないようでは本末転倒だ」。東京都内にある特別養護老人ホームの施設長はそう指摘する。

 資格の名称などが変わってしま…

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