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キャンプの素顔

 トイレに行きたいのを我慢して、見入ってしまった。阪神の左腕、岩田稔(31)が、ブルペンで熱のこもった投球を披露していたからだ。

 「前日は、体重移動が良くなかったから」と、最初は通常より重い球を使って投げ始めた。5球ほどでいつも使っている球に。やがて、変化球もどんどん使い始めた。

 受けている捕手は途中まで2年目の梅野隆太郎(23)。抜け気味の球があると、「ちょっと手先でいってますね」と梅野。“物怖(お)じ”という言葉を知らないかのように、突っ込んでくる。打者の空振りを誘うフォークボールは、本塁ベース付近でショートバウンド。それでも「いい練習です。ありがとうございます」とひるまない梅野。岩田は「ごめん」と言いながら、笑っていた。

 岩田「今、何球?」

 梅野「イチ、マル、キュウ(109球)です」

 岩田「店やがな」

 このやりとりを最後に、梅野は次の練習に移動。それでも岩田はペースが落ちない。普段はクールな雰囲気だが、盛り上げ役に背中を押されて気持ちが乗っていたのだろう。150球を超えると、「なりたかった身長(の球数)まで!」と自らを鼓舞。185球目。ズドンと直球を決めて締め、両手を頭上で合わせて丸印を作った。脇で見ていたお客さんからは拍手が起き、岩田も帽子を取って応えた。見ているこちらも熱い気持ちにさせられ、トイレに急いだ。

 「投げても200球までと決めていた。『これだけ投げても大丈夫』というところを周りに見せていかないといけないし」。帰り際の取材時には“いつもの”岩田に戻っていた。でも、実戦が近づいてきている時期に、あんな姿を見られるなんて。マウンド上にいる本来の岩田投手を知るための貴重な時間となった。(井上翔太)

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