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 食卓は、人数(にんず)が人数だけに、さほど大きくはなかった。部屋の広さに比例して、むしろ小(ち)さ過(すぎ)る位であったが、純白な卓布を、取り集めた花で綴(つづ)って、その中に肉刀(ナイフ)と肉匙(フォーク)の色が冴(さ)えて輝いた。

 卓上の談話は重(おも)に平凡な世間話であった。始(はじめ)のうちは、それさえ余り興味が乗らないように見えた。父はこういう場合には、よく自分の好きな書画骨董(しょがこっとう)の話を持ち出すのを常としていた。そうして気が向けば、いくらでも、蔵(くら)から出して来て、客の前に陳(なら)べたものである。父の御蔭(おかげ)で、代助は多少この道に好悪(こうお)を有(も)てるようになっていた。兄も同様の原因から、画家の名前位は心得ていた。ただし、この方は掛物(かけもの)の前に立って、はあ仇英(きゅうえい)だね、はあ応挙(おうきょ)だねというだけであった。面白い顔もしないから、面白いようにも見えなかった。それから真偽の鑑定のために、虫(むし)眼鏡(めがね)などを振り舞わさない所は、誠吾も代助も同じ事であった。父のように、こんな波は昔の人は描(か)かないものだから、法にかなっていないなどという批評は、双方ともに、いまだかつて如何(いか)なる画(が)に対しても加えた事はなかった。

 父は乾いた会話に色彩を添える…

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