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 白く、細かい砂粒。透き通るほど青い海。福井県・敦賀半島の西海岸に「水晶浜」がある。北陸屈指の海水浴場だ。砂浜に立つと、1キロほど先にドーム形の建物が見える。関西電力初の原発である美浜原発1~3号機(福井県美浜町)だ。

 美浜原発は、関電が保有する大飯、高浜両原発と比べてもっとも電気出力が小さい。とはいえ、3基の総出力は計166・6万キロワットあり、年間発電量は隣接する滋賀県の年間消費量にも相当するという。

 1号機は1970年、2号機は72年、3号機は76年に運転を始めた。3基とも、日本の原発史に刻まれる出来事があった。

 1号機は70年の大阪万博に「原子の灯」を送った。2号機はバブル期の91年に蒸気発生器の伝熱管が破断し、国内で初めて緊急炉心冷却システム(ECCS)が作動する事故が発生した。2004年には3号機で蒸気噴出事故が起き、5人が死亡、6人が負傷する惨事が起きた。この事故を受け、関電は原子力事業本部を美浜町内の若狭支社(当時)に移転。現社長の八木誠氏も原子力事業本部長を務めたことがある。

 この春、美浜原発は転換期を迎える。2月、関電の豊松秀己副社長(原子力事業本部長)が「今年度末ごろに運転延長か否かの方向性を出す」と福井県に伝えた。延長しなければ、いよいよ「廃炉時代」の本格的な幕開けとなる。

     ◇

 「ピンチとは思っていません。チャンスだと受け止めています」。福井県美浜町の松下照幸さん(66)は廃炉問題をそうとらえる。

 元NTT西日本社員。51歳のときに退職し、町内で自然体験施設「森と暮らすどんぐり倶楽部」の経営を始めた。川遊びやキャンプなどを通じ、子どもたちに自然と環境の恵みを感じてもらう活動だ。その傍ら、バイオ燃料の開発など再生可能エネルギーに取り組んでいる。

 少年のとき、原発誘致が決まり、みるみるうちに町が変わるのを覚えている。道路ができ、港が整備され、学校がきれいになった。地域の若者が関電に、取引先の地元企業に職を得た。「原発の光ばかりが強調され、事故が起きるなんて、当時は考えもしなかった」と松下さんは振り返る。

 だが、それは「思い込みに過ぎなかった」と言う。1986年の旧ソ連・チェルノブイリ事故で原発問題に関心を持ち、95年に東隣の敦賀市で起きた高速増殖原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故で「脱原発」に目覚めた。「地元の住民こそ、原発は『危ないぞ』『おかしいんじゃないか』と声を上げないといけない」。そう決意し、98年の町議選に無所属で立候補した。2期務め、推進派が多数を占める町議会で原発の危険性を訴え続けた。

 2011年の東京電力福島第一原発事故の後、松下さんは首相官邸前の再稼働反対デモに加わり、最前列に立った。だが、都会の住民と交流するにつれ違和感を覚えたという。

 町民は、原発がある不安と原発がなくなる不安が交差する。原発がなくなれば、多くの町民が仕事を失う。「都会の人たちは『危険な原発を止めれば良い』と言うが、そう単純な話ではない。私は、原発で生計を得ている町民とともに暮らしている。原発がない『その後』を考えないといけない」

 町財政は原発に頼る。14年度の一般会計当初予算は40%近くが国の電源三法交付金、法人町民税や固定資産税など原発関連が占める。原発が動けば、13カ月ごとに定期検査があり、全国から作業員が集まる。原発を失うことは、税収も雇用の場も減ることを意味する。「反対一辺倒で廃炉を訴えるだけでは町民の理解は得られない」。松下さんはそう考えた。

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 廃炉問題を語るとき、有毒な使用済み核燃料の処分問題がある。15年1月末現在、福井県内にある関電の美浜、大飯、高浜の3原発11基で、核燃料の貯蔵容量は計1万1309体(ウラン5134トン分)となっている。この3原発で実際に保管中の核燃料は6612体(同3002トン)だ。さらに、日本原燃の貯蔵施設(青森県六ケ所村)に計約853トン分のウランを移送している。

 福島の事故以前のように、3原発11基が運転した場合、1年間に平均450体の使用済み核燃料が発生する。11基すべてが動けば、使用済み核燃料プールは今後6~7年で埋まってしまう計算だ。

 日本は使用済み核燃料を再処理し、再び原発の燃料とする「核燃料サイクル政策」の方針を取っている。その柱となる再処理工場も「もんじゅ」も、相次ぐトラブルで運転開始のめどが立っていない。原発を動かせば、その分だけ使用済み核燃料が生まれる。だからこそ、政府も電力業界も、使用済み核燃料を一時保管する「中間貯蔵施設」が欲しい。

 美浜町議会は04年に中間貯蔵施設の誘致を決議し、山口治太郎町長も関電に立地調査を要請したことがある。それは、廃炉のためではなく、再稼働を続けるためだった。

 だが、福井県の西川一誠知事は「発電は引き受けてきたが、中間貯蔵や処分まで引き受ける義務はない」と、八木社長に県外設置を迫っている。それゆえ、山口町長は「再稼働にも廃炉にも、中間貯蔵は必要な施設。だが、知事さんが『県外で』とおっしゃっているので、今は様子を見ている」とトーンダウンしている。

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 こうした中、松下さんは「脱原発」を実現させる一手として、山口町長に提案書を渡した。13年秋のことだ。原発は廃炉が決まったとしても、現実には、元ある場所からすぐに消えるわけではない。「使用済み核燃料の保管先がなければ、廃炉はかなえられない」。そこで提案したのが、中間貯蔵施設の町内誘致。松下さんにとって苦渋の決断だった。

 提案の柱は、美浜原発3基すべ…

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