【動画】一夜明けたら黒板にアート。武蔵野美術大の学生らが「黒板ジャック」で美術交流=白井伸洋撮影
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 朝、登校すると教室の黒板いっぱいにチョークで描かれた芸術作品が――。そんな出来事が首都圏の小中高校で相次いでいる。仕掛けたのは武蔵野美術大(東京都小平市)の学生たち。始業とともに消されてしまう時間限定のアートが、美術の楽しさを子どもたちの心に刻んでいる。

 「何これ、めっちゃすごい」「リアルすぎて、つま先から感動」

 埼玉県朝霞市の市立朝霞第四中学校に登校してきた生徒たちが次々に声を上げた。4日午前8時前。3年生の5クラスの黒板と廊下の窓に作品が現れた。

 学生たちの黒板ジャックだ。前日のうちに14人が2人1組にわかれて「卒業」をテーマに制作。チョークの先を削ったり、ティッシュやはけでぼかしたり、半日がかりで仕上げた。

 歓声が上がってから1時間足らず。絵は生徒たちの手で消された。通常の授業で黒板を使うため、始業前に消すのがルールだ。

 同大のプロジェクト「旅するムサビ」で、学生が外部講師として小中高校を訪れる際、インパクトのある方法で訪問を知らせようと始めた。2011年以降、4都県の14校で120を超える黒板を占拠した。

 油絵を専攻する2年生、鈴木菜緒さん(20)は高校時代に黒板ジャックを体験。その感動もあって同大に進み、プロジェクトにも参加した。「見る側と見せる側の違いを実感した。『人を魅する』ということについて客観的に考える機会になりました」

 三澤一実教授(52)は「美術は体験しないと伝わりません。黒板ジャックを通じて、美術が日常と一体化して生活の中に息づいていることを感じてもらえれば」と話す。(若松真平)